uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 324

「ええい!!」
 
 そういってネナンちゃんが一生懸命動き回ってる。ここはアズバインバカラの宮殿の一角だ。広く取られた中庭で木偶人形が何体かあり、更に壁には丸い砂袋がつるされてる。それに兵士が先端をつぶした槍を投げている。そんな傍らで一人のひげが長い老人の指導の下、ネナンちゃんが汗水を垂らしてるのだ。
 
 勇者ご一行が中央へと旅立ってすでに数日は立っただろうか? 多分もう中央についてるとは思う。勇者の奴がさっさと中継器を起動させれば連絡を取れるんだけど……それはどうやらまだだ。道中に戦闘がありすぎて力が枯渇してるのかもしれない。一応起動には勇者の力が必要だしね。
 
『この世界の敵に後れを取るとは思えませんが』
「そうだけど、守る奴らは多いしね。それに協会の力だって不明じゃん。かなり力を隠してると思うんだよね」
 
 私は薄暗くひんやりとしたG-01の中でAI 相手に喋ってる。なにせ勇者も魔王もこの場にはもういないからね。AIくらいしか喋る相手がいないのだ。
 
 なんかつらくなった時にネナンちゃんが私の脚元に来てうずくまって弱音を漏らしたりしてるけど、それに応える訳にもいかないからね。私はひそかにネナンちゃんに対して『頑張れ!』とエールを送るしかできない。
 
 ネナンちゃんは特別な力を天から授かった巫女? とか御使い的な感じで宮殿で保護されてる。まあ実際、この世界の誰よその授かった力は大きいだろうからね。
 
 保護しないわけにはいかない。色々と協会が言ってきてるみたいだけどね。孤児の保護は協会の役目とかなんとか……奴らもネナンちゃんがとんでもない力を内包したのは知ってるからね。
 どうにかして正攻法で宮殿から連れだすことを狙ってる。実は勇者たちが旅立った後も何度か宵を理由して協会は刺客を送ってきてる。まあもちろんそれは私が潰してるから、成功はしてない。けどそれはポニ子を通じてちゃんとラバンさんたちに伝えてはいる。
 たぶんちゃんと伝わってる筈だ。ポニ子はポニポニとしか喋れないけどね。まあ刺客の亡骸もそのままにしてるし、それを指さしてポニ子がポニポニしてたら、察しのいいラパンさんは気付いてくれる。
 
「もうあれ何個目だっけ?」
『十三個目ですね』
「ちょっとネナンちゃん世界に愛され過ぎじゃない?」
『ほかに変わりのような存在がいないのからでしょう。彼女は大きな世界の力の流れの栓の一部になってるみたいですね』
「栓?」
『力が湧きだす場所と取らえてもらって構いませんよ。世界にはいくつかそういう場所が有ったりします。そしてそういう場所からは特殊な生物が発生したりしますね』
「そんなのを一人の少女に設定しないでよ」
 
 そんなのは場所とかが成るべきじゃないの? 一人の少女がそんな力が湧き出る場所認定されるってどうよ? てかネナンちゃんが無事なのって私が彼女が身に着けるアクセサリーを全部力を受け入れるタンクに変えてるおかげである。
 
 ネナンちゃんは気付いてないが、毎日変わるそれは一日ごとに満杯になってるといっていい。最初はそれこそ三日後とかに満杯になるくらいだったが、今や一日で彼女の身に着けてるタンク代わりのアクセサリーは満杯だ。そしてすでに十三……だと? 私が作った……というかG-01の力で作り出したアクセサリーの容量はそれこそこの世界の人たちが一生かかっても満杯になんてできないくらいの容量があるはずだ。
 
 それを一日って……最初は元からネナンちゃんに与えられた宝石を全部変えてどうにかなるでしょ……とか思ってたが、今や毎日ネナンちゃんの為にラパンさんがもってる無駄にしてたアクセサリーを引っ張り出してそれを私が毎夜作り変えて朝にネナンちゃんに着けさせるってことになってる。
 
 ネナンちゃん……なんというやんちゃな子だよ。おかげでここから動けないよ! いや、一気に作り変えてればいいだけなんだけどね。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 323

「まあいいでしょう」
 
 カザムジャナちゃんがそういって変な時間は終わった。どうやら最後ので満足してくれたらしい。よくやったプライム。これで王様と王妃様に頼まれていたことはミッションコンプリートだろう。
 
(いや、まだだな。油断するのは早い)
 
 なにせまだここは協会だ。しかも協会の中枢で本拠地だ。いくら俺がこの世界の者達よりも強いといっても、油断は禁物だろう。なにせプライムもカザムジャナちゃんも、そしてアヴァーチェも子供で何の力もないんだ。
 いや、一応アヴァーチェは魔法が使えるが、それを当てにする――なんて事はできないだろう。
 
「よし、それではさっそくここから脱出しましょう」
「他の皆さんは大丈夫なのでしょうか? 永遠に迷い続けるとかなると哀れなんですが?」
 
 カザムジャナちゃんが自分以外にこの場所で迷ってる子たちを心配してる。けどそれは問題ない。まあまだちょっと俺達の為にも迷ってもらうつもりだけどね。
 なにせすぐにカザムジャナちゃんがいないとばれるのは困る。プライムにアヴァーチェの次にカザムジャナちゃんまでもいなくなったとわかったら、どう考えても王様達の関係が疑われるだろう。
 そうなると中央脱出に支障が出る。なるべく明日まではバレないのが望ましい。ばれてたとしても、それどころじゃない――みたいな感じにしとく必要があるから、仕掛けは必要だろう。幸いにもこの建物の構造を把握するために、俺は最初に小さな光をばらまいていた。そしてそれは今もこの協会の中枢の奥へと入り込んでる。気づかれないように消す事だってできる――が。
 
(最後には光達に仕事をしてもらおう)
 
 俺はそう思ってた。とりあえず俺たちが脱出するルートとは反対の方でまずは一つの光を爆発させる。原因不明の爆発――それでこの協会内部の人々はその爆発に気を取られるし、どうあっても人の波はそっちに向かう。
 
「さあ今のうちに!」
 
 俺は三人を先導して外を目指す。外と言っても、最初に降り立った中庭だけど。あそこから空に出れば簡単だ。門じゃないから検問してる奴らだっていないからな。
 最初に倒した協会の奴らがどうなったかだけど、なんとまだ見つかってないし、あそこは協会の浅い部分だからだろう、まだ静寂してる。奥側が慌ただしくなってるからな。とても都合がいいことだ。
 
 俺たちは危なげなく中庭までつくことが出来た。
 
「失礼します」
 
 俺はそういってプライムとカザムジャナちゃんの腰に手を回して抱えた。
 
「ちょっ!? 失礼ではなくて?」
「すみません、けどこうしないと危ないですよ?」
 
 二人はまだ小さいからな。激しく動くと二人の力では振り落とされる危険がある。だから俺が抱えた。アヴァーチェだけは首に手を回して自分の腕の力で頑張ってもらう。一応魔法的アドバイスで身体強化的な事ができないかと思ってやってもらってるから大丈夫だろう。
 
「姉上、これは仕方ない事です。我慢してください」
「プライムがそういうなら。許しましょう」
 
 と言う訳で、許可も出たし俺は両手にプライムとカザムジャナちゃんを抱えて、首からアヴァーチェを下げて協会の中庭から一気に空へと飛び出した。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 322

「えっと……どういうことですか姉上?」
「ですからですね、プライムに私は『お姉ちゃんと一緒じゃなきゃヤダ!』と言ってほしい訳です。姉のささやかな願いを聞き入れることはできませんか?」
「えーとですね。それは全然かまわないのですが……その……理由を聞いてもいいでしょうか?」
「理由なんてありませんよ。強いて言うならば、姉が弟に落とされたという理由が必要だからです」
 
 どうやらプライムはカザムジャナちゃんのいうことが理解できないみたいだ。かなり頭がいいと思われるプライムが困惑した表情で俺やアヴァーチェに助けを求めるみたいな視線をよこしてる。
 プライムは多分頭で理解しようとしてるからカザムジャナちゃんの行動が理解できないんだろう。だから俺はこういってやるよ。
 
「考えるな感じるんだ。人の思考は時にして合理的じゃない判断位するだろう」
「付き合ってやってくれプライム。あいつはああいう奴なんだ」
「そうですか……」
 
 納得は言ってないみたいなプライム。けどほかに言いようがな……たぶんだけど、カザムジャナちゃんはプライムの事が大好きなんだろう。俺がわかるのはこのくらいだ。
 でもそれは家族ならだれもが持ってる感情だろう。そういう愛に子供なら植えててもおかしくはない。まあ考えてもプライム的には納得なんてできないだろうし、とりあえずさっさと言ってあげればいい。そうしたら解決なんだからな。
 
 それだけで俺たちについてくるというのなら、簡単でいいじゃないか。アヴァーチェの時のようにいろいろと小細工をしなくていいのは助かる。実際大変だったからな。それがただ一言で済むというなら……破格の条件と言っていい。なのでプライムは困惑してるだろうが、頼む。
 
「えーと……お姉ちゃんと一緒じゃなきゃヤダ!――これでいいですか?」
 
 一応求められたセリフを言ったプライム。でもそれを聞いたカザムジャナちゃんは何やら考え込んでる。
 
「駄目ですね。もっとお姉ちゃんへの愛情をこめていってください。なんか棒読み気味でしたよ」
 
 どうやらカザムジャナちゃんは今のでは満足できなかったみたいだ。更に困惑したような顔を見せるプライム。。もしかしたら今までで一番の試練がプライムには襲い掛かってるのかもしれない。
 けどいくら助けを求められても俺たちには何もできない。カザムジャナちゃんから合格をもらえるのはプライムしかいないのだ。
 
「頑張れ」
「お前ならできるさ。賢いからな」
「賢さは関係ないのでは?」
 
 アヴァーチェの言葉にプライムはそう反論するが、いっぱい考えてカザムジャナちゃんの満足いく演技を導き出してほしい。俺たちにはどうすることもできないし。
 
「ふふ、そんな深く考える必要なんてないんですよプライム。プライムは私の事が嫌いですか?」
「そんなことないです」
「うんうん、ならその気持ちをそのまま乗っけて言ってみましょう。さん、ハイ!」
「お姉ちゃんと一緒じゃなきゃヤダ!」
「もっと抑揚をつけて!」
「お姉ちゃんと、一緒じゃなきゃヤダ!」
「もっとヤダ!に感情をこめて!」
「お姉ちゃんと一緒じゃなきゃ、ヤダ!」
「もっとお姉ちゃんの部分を情緒的に!」
「お姉ちゃんと……一緒じゃなきゃ、ヤダ!」
「さあ感情を最大限に高めて愛するお姉ちゃんに向けて!」
「お姉ちゃんと……一緒じゃなきゃ、ヤダアアアアアアア!」
 
 何をやってるんだろうと思った。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 322

「えっと……どういうことですか姉上?」
「ですからですね、プライムに私は『お姉ちゃんと一緒じゃなきゃヤダ!』と言ってほしい訳です。姉のささやかな願いを聞き入れることはできませんか?」
「えーとですね。それは全然かまわないのですが……その……理由を聞いてもいいでしょうか?」
「理由なんてありませんよ。強いて言うならば、姉が弟に落とされたという理由が必要だからです」
 
 どうやらプライムはカザムジャナちゃんのいうことが理解できないみたいだ。かなり頭がいいと思われるプライムが困惑した表情で俺やアヴァーチェに助けを求めるみたいな視線をよこしてる。
 プライムは多分頭で理解しようとしてるからカザムジャナちゃんの行動が理解できないんだろう。だから俺はこういってやるよ。
 
「考えるな感じるんだ。人の思考は時にして合理的じゃない判断位するだろう」
「付き合ってやってくれプライム。あいつはああいう奴なんだ」
「そうですか……」
 
 納得は言ってないみたいなプライム。けどほかに言いようがな……たぶんだけど、カザムジャナちゃんはプライムの事が大好きなんだろう。俺がわかるのはこのくらいだ。
 でもそれは家族ならだれもが持ってる感情だろう。そういう愛に子供なら植えててもおかしくはない。まあ考えてもプライム的には納得なんてできないだろうし、とりあえずさっさと言ってあげればいい。そうしたら解決なんだからな。
 
 それだけで俺たちについてくるというのなら、簡単でいいじゃないか。アヴァーチェの時のようにいろいろと小細工をしなくていいのは助かる。実際大変だったからな。それがただ一言で済むというなら……破格の条件と言っていい。なのでプライムは困惑してるだろうが、頼む。
 
「えーと……お姉ちゃんと一緒じゃなきゃヤダ!――これでいいですか?」
 
 一応求められたセリフを言ったプライム。でもそれを聞いたカザムジャナちゃんは何やら考え込んでる。
 
「駄目ですね。もっとお姉ちゃんへの愛情をこめていってください。なんか棒読み気味でしたよ」
 
 どうやらカザムジャナちゃんは今のでは満足できなかったみたいだ。更に困惑したような顔を見せるプライム。。もしかしたら今までで一番の試練がプライムには襲い掛かってるのかもしれない。
 けどいくら助けを求められても俺たちには何もできない。カザムジャナちゃんから合格をもらえるのはプライムしかいないのだ。
 
「頑張れ」
「お前ならできるさ。賢いからな」
「賢さは関係ないのでは?」
 
 アヴァーチェの言葉にプライムはそう反論するが、いっぱい考えてカザムジャナちゃんの満足いく演技を導き出してほしい。俺たちにはどうすることもできないし。
 
「ふふ、そんな深く考える必要なんてないんですよプライム。プライムは私の事が嫌いですか?」
「そんなことないです」
「うんうん、ならその気持ちをそのまま乗っけて言ってみましょう。さん、ハイ!」
「お姉ちゃんと一緒じゃなきゃヤダ!」
「もっと抑揚をつけて!」
「お姉ちゃんと、一緒じゃなきゃヤダ!」
「もっとヤダ!に感情をこめて!」
「お姉ちゃんと一緒じゃなきゃ、ヤダ!」
「もっとお姉ちゃんの部分を情緒的に!」
「お姉ちゃんと……一緒じゃなきゃ、ヤダ!」
「さあ感情を最大限に高めて愛するお姉ちゃんに向けて!」
「お姉ちゃんと……一緒じゃなきゃ、ヤダアアアアアアア!」
 
 何をやってるんだろうと思った。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 321

「ふふ、姉は弟を信じるものですよ。それともあなたは弟を語る偽物なんですか? お姉ちゃんを騙す人ですか?」
「違います! 私は姉上を決して騙したりしません!」
「ならよしです」
 
 二人がそんなやり取りをしてる中、俺はいままでプライムは騙してたよね? とか思った。なにせ今までは普通の三歳児くらいの演技してたんだろう? それって騙してるような……いや、でもやむにやまれぬ感じだったとは思う。プライムからしたらこんな大人びた子供だと知られたら、気持ち悪がられると思ったのかもしれない。
 実際、ありそうだし。
 
「それでどうなんだカザムジャナ。私たちと一緒に来るのか?」
「ですがいきなり協会を出るといっても準備が必要です。シスターに確認をとらないといけないですし、せっかく父上と母上に会うのに、一般的なシスターの服では……どうしましょう? 何かいい服はあったでしょうか?」
 
 アヴァーチェの言葉に、そういってカザムジャナちゃんは頬に手を当てて悩み始める。やっぱりだけどこの子……なんか結構自分のペースを崩さない子だな。それに事態の深刻さを理解してない。カザムジャナちゃんはちょっと行ってまた戻ってくる――程度だと思ってるみたいだけど、そういうんじゃない。
 
「それにその方は?」
「初めましてカザムジャナ様。私は貴女様方のご両親に頼まれてここまで来ました勇者と申します」
「ユウシャ様ですか、これはこれはご苦労様です」
 
 王族の頭は高いところにありそうだが……カザムジャナちゃんは案外あっさりと俺に対しても頭を下げた。この子は王族だけどなんかプライムやアヴァーチェと違って上に立つ者……的な雰囲気があんまりない。
 
「カザムジャナ、父上と母上はどうやら協会と対立するみたいだ」
「そうなのですか? なら戻ってこれないと? 困りましたね……色々とある私物は一回では持っていけません」
 
 この子は協会に一体どれだけの私物を持ってるんだ? まあけどよくよく考えたら、プライムはまだ三年間くらいだが、アヴァーチェもカザムジャナちゃんも十年くらいここにいる訳で、私物くらいはあるか。そんなの一切匂わせてないアヴァーチェがおかしいのかもしれない。
 
「私物はいったん諦めてください姉上。今は一刻も早く協会を離れることが大切です」
「これは絶対なのですか?」
 
 やっぱりカザムジャナちゃん的には嫌なのかもしれない。ここで反対されたら面倒だな……と思いながらも、三人のやり取りも俺は見守る。
 
「絶対です。私たちの一人でも協会側に居たら、父上と母上の枷になってしまいます」
「そうですか……仕方ないですね。わかりました、ではプライム――『お姉ちゃんと一緒じゃなきゃヤダ!』と言ってください」
「はい?」
 
 なんかプライムが間抜けな声を出してた。いや、まあそういう反応も出るよな。なんだって?

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 320

「どうしてあなた達がいるのですか?」
 
 袋小路でアヴァーチェとプライムがカザムジャナちゃんと向き合ってる。周囲には誰もいない。上手く彼女を避難場所に行く前に孤立させることが出来た。何をやったのか? それは単純な事だ。
 
 この協会の内部は結構似た作りの所が多い。それを利用してちょっと細工をさせてもらった。本当の通路に壁を置いたり、角を曲がるたびに、少しずつ後方から、分断したりだ。
 
 その際あまり違和感を抱かれないように、一瞬の軽い催眠状態になる魔法的なものを使った。壁とかも本当に壁を作ったわけでなく幻影だ。
 この協会内で、慣れてる筈の彼女たちを迷わせて、もしも何者かの仕業……的な事が流れててもその狙いが王族だと知られないように、全員に迷ってもらう。
 
 一応アヴァーチェの方の教室の方もまだ収束はしてないから、アヴァーチェだけがいなくなったとは気づかれてない筈。プライムは仕方ないが、それだけじゃ確信はきっと持てないだろう。
 
 だから魔法と幻影を駆使して、ここら辺をうろうろとさせながら、更に俺の魔力で作った通路とかを織り交ぜつつ、彼女たちを分断した。かなり自然となるようにしたから、結構大変だったな。
 
 大袈裟に完全にこっちの作った空間に誘い入れると、気づかれるかもしれないが、一部本物と混ぜてたからきっと気づかれてないだろう。
 
「ここは乙女の園、男性は立ち入り禁止ですよ?」
 
 カザムジャナちゃんは二人がここにいることに首をかしげてる。けど警戒してるってほどじゃない。「どうしてだろう?」という疑問が大きい感じに見える。そんなに危機感が無い子なのかもしれない。
 さて、どうやって彼女を二人は説得するのか。
 
「姉上、ぶしつけですが協会から出ましょう」
「あらあら、どうしたのプライム。お母さまが恋しくなったのかしら? おいで、お姉ちゃんがギューってしてあげるわよ」
 
 そういってカザムジャナちゃんは両手を広げる。それに対してプライムは「結構です」と言ってた。せっかくお姉ちゃんが抱擁してくれるんならされてもよさそうだが……まあそんな場合ではないか。
 
「そう……」
 
 プライムに拒否されてなんか落ち込んだ様子のカザムジャナちゃん。冗談……とかじゃなかったんだな。
 
「そういえばなんだかプライムは大人びましたね」
「すみません姉上。本当の自分はこうなんです。今までは子供のフリをしてたんです」
「そうなの? でも私はプライムの姉ですから。受け入れましょう」
「えっと……疑わないんですか?」
 
 なんかプライムも面食らってるぞ。なにせこの状況なのに、カザムジャナちゃんはあっさりとプライムの事を信じてるからな。頭のいいプライムからしたら、こんなに簡単に信じられるわけないって思ってるんだろう。
 プライムは頭が言い分、子供らしさの象徴ともいえる純粋さがないからな。それに比べて彼女『カザムジャナ』ちゃんは純粋に十歳くらいの少女なんだろう。
 そう思った。

転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 319

「どうやって接触するんだ? 私の時のように砂嵐でもおこすか?」
「あれは丁度兄上たちがそういう事をやってたから、力の暴走を装えたのです。ここでいきなり砂嵐で視界を奪えば、誰かの攻撃だと思われます」
「まあ確かに……」
 
 アヴァーチェもプライムもどうやってあの女の子と接触するか……というのを話し合ってる。まあここは男子禁制らしいからな。いきなり出て行って「やあやあちょっときてくんない?」――とかやれないのだ。知り合いが来たといって面会とか……いやどう考えても無理か。だって今から避難しようとしてるのに、面会ってどう考えてもおかしいし。
 
 そもそもがその非難の原因を作ったのはアヴァーチェ達のいた場所で、そこからアヴァーチェが一人で来た――なんておかしい。混乱してれば行けるかもしれないが、ここはある意味落ち着いてるからな。喧噪はこの乙女の園にまではおよんでてない。
 廊下にたたずんでる少女たちは祈るために手を合わせて皆そっと目をつむってる。よく教育されてるみたいだ。
 
「あの子はなんていう名前なんだ?」
「姉上は『カザムジャナ』です」
 
 カザムジャナ……なかなか特徴的……と思うのは俺が異世界人だからか? そのカザムジャナちゃんは二人よりもくすんだ銀髪……赤が混じってちょっとさびたように見える髪色してる。
 それに瞳の色も青というよりも茶色に近いから、普通の市民に近いと思う。肌も色も小麦色してるし……でも流石にアヴァーチェへプライムに「腹違いかな?」とか聞けないし……興味はあるが、俺には関係ないことだ。
 とりあえずあの子もこうやって連れ出すことが出来ればいい。王家の家庭内の事情に込みこむつもりはない。
 
「また神父様に化けますか?」
 
 そういってプライムが耳打ちしてくる。これはアヴァーチェには聞かせられないからな。なにせあの時、問答した神父が俺だとわかれば、協会への信頼を取り戻してしまう。
 だからアヴァーチェの前では変身魔法は使いたくない。その可能性を感じさせたくないからだ。
 
「いや、それは止めておこう」
「じゃあどうするのですか?」
「そうだな……」
 
 中年的な小じわが目立つシスターが少女たちを引率していく。その後ろを追いながら俺は考える。
 
「穏便に……なるべく気づかれずにするにはどうするか……」
 
 制約が多いと大変だ。力だけを使って強引に行けるのなら、簡単なんだが……いかんなそれじゃあ魔王と同じ考え方だ。でもあの集団でカザムジャナだけを自然と分離する方法なんて……しかも彼女は少女たちの中くらいにいる。
 これが最後方にいてくれれば、まだ簡単に引きはがすことが出来た。でも中くらいだと困る。だって前にも後ろにも他の少女がいるからだ。いきなりカザムジャナだけが消えたら協会側はどう思うだろうか? 既にプライムとアヴァーチェがいないとかばれてたら、敵が王族を狙ってるとばれる確率は高い。
 それは困る。あくまでも謎の現象で事故が起きた……的なくらいに思ってくれてないと、いきなり協会が王宮へとアクションを起こすかもしれない。
 
「これでいくか……」
 
 俺は床に手を置いて力を使う。自然に……そして気づかれないように、少女たちの道を欺けるんだ。