「で、これからどうすればいいの?」
私はAIにそう聞いた。だってAIに聞かないと何にもわかんないし……そもそもこの世界の情報とか無い訳?
『成分分析でこの世界の力にジャネスが多く含まれてる事がわかりました。なのでここで知的な生物と出会うのは難しいでしょう。ジャネスは自然を尊ぶのです。きっとこの世界のサンクチュアリは特殊な個体に宿ってる筈です』
「つまりは、動物でもさがしてればいいと?」
『そうですね。ある程度の種類を把握してないと何が貴重なのかわかりませんから』
そういうことらしい。動物探しか……知的な生物も居ないとか、この世界は未開の地なのかな? いや、そういう世界もあるだろうけど……
「原始人とかも居ないわけ?」
『どうでしょうか。ですが、無駄に規定概念に当てはめて考えるのは止めた方いいですよ』
「何でよ?」
『ここは異世界だからです』
それを言われたら確かに……としか言い様がない。ここは異世界なのだ。私がうろ覚えてる歴史とか全然役に立たないんだ。
「ねえ、二人とも、ここら辺かなり動き回ったんでしょ? 何か居なかった?」
私は足下の勇者と魔王にそう尋ねる。あれだけ動き回ってたんだ、何かみてるくらいするだろう。
「いや、この周囲では何も見なかったが……」
「ふん、そんな手頃な動物が居たら仕留めてくってるわ!」
むむ……あれだけいろいろと動き回ってた二人が動物を見てないって……あり得る? そんな馬鹿な……それにさっき私がいたずら心で土下座したときにはなんかの鳥の羽ばたきみたいな音が聞こえたが……空にいる? でもこんなどでかい森に何も居ないなんて……
(いや、まて。私の常識は前の世界での常識だ)
もっと正確に言うなら、前々回の世界でもある。だから役になんて立たない。そもそも自然を尊ぶとか……何がっ感じだが、知的な生物が居ないわけじゃなく、地上には生物が居ない世界って事もあり得るのでは?
「何かレーダー的な物って無いの?」
『ありますが、使えませんね』
「それってまだ壊れてるって事?」
まだ私は完全に治ってはない。一応動けるようになっただけだ。それを考えるとレーダーとかは後回しになっててもおかしくない。
『いいえ、使えはしますが、まだこの世界の情報が足りないのでレーダーとして機能できません』
「よくわからないけど、役に立たないのはわかった」
どうしようか? とりあえずここは視界も悪いし、もっと視界よくした方がいいんではないだろうか?
「ちょっと二人とも剣になってよ」
「うん? それはどういう……」
「何を言ってる貴様? 剣なんかになれるわけ無いだろうが。そもそもこれ以上こき使われる気は無い!」
ええ? 何? もしかして二人とも剣になったときの記憶無いの? まあ、そもそもなんで剣になったのか全くの謎だしね。なって――っていってなれる物でもないのかも?
「ちょっと……」
私は文句をAIに告げる。するとAIがこう返してきた。
『どのみちここではアレは使えません。ここは世界が違いますから』
「あれは自分たちの世界限定の大技みたいな奴って事?」
『その認識でとりあえずはいいです』
私が理解できないからっておおざっぱだな。でも剣が無いんなら、伐採する事も出来ないじゃん。
「しょうがないか」
私は屈伸を何回かして感触を確かめる。そして膝に力をためる。膝関節部分が何やらキュイーーーンと唸ってるが気にしない。力を開放する様に膝を伸ばすと、凄い勢いで私は跳んだ。小さい枝は無視だ。私の体にあたるだけで折れる。けど、私よりも大きな木は当然枝だって大きい。
端っこに行くほどに細くなってるが、進路上邪魔になる枝はある。だからそれを殴って押し通る。そしてついに私の見てるモニターにいっぱいの青空が映った。
「これで生き物でも森の出口でも見えれば――え?」
視界に広がるのはどこまでも続く森……森・森である。終わりはない。そして遠くに変なのが見えた。それは沢山の木々が集まってどこまでも空に昇ってる木の集合体だ。まさかこの世界って、森しかないんじゃない? そんな疑念がわいてきた。