私達は今、勇者と魔王を肩に乗せて移動してる。なんで私が一番労働しないといけないのか不満だけど、二人は私を抱えることは出来ないから仕方ない。いや、くさっても魔王と勇者だ。案外持ち上げる位は出来るかもしれない。
けどそれで移動するとなるとどう考えてもスピードは出ないだろう。それなら私が二人を乗せて駆けたほうが絶対に早い。
(結局、向かうところはあそこなんだよね……)
私が今向かってるのは木というか、森の集合体が天に昇ってるよくわからない物を目指してる。推定千キロ以上先である。千キロ先にある場所に走って行くって頭おかしいが、私は元から盛り物に乗ってるような物だ。はっきり言ってG-01は車なんかよりも全然速い。私は今、自分を有に超える木々の枝を渡り跳んでる。勇者達もそうやって岩を探してきてくれたらしいが、なんと私が乗っても大丈夫なのだ。
はっきり言っておかしいサイズ感してると思う。まあどの木でも良いわけでもないし、ちゃんとえり好みして着地する枝は決めてるけどね。これがなかなかに良い訓練になってると思う。私はG-01の事をまだあんまり理解してない。
理解して無くても動いてくれるしね。一応私はコクピット……だと思う私の居る場所で、一生懸命体を動かしてる。もしもこの光景を見られたら、何やってんだ? と思われること請け合いだ。けど誰も居ないからね。関係ない。
それに私は案外楽しくやってる。なかなかにゲームみたいで楽しいし、それに実はちゃんと感覚がある。戦闘の時のように、まさに一心同体って感じに今はなってないが、それでも私の腕や足にはちゃんと感覚が伝わってる。だから枝に触れて再び跳ぶときのタイミングとか、食感でわかるというね。体が浮いてる状態だからそれが一番違和感ある。
感覚があるからこその違和感……これは慣れてくしかないね。後はこの目……いや、視界? モニターでは私が乗っても大丈夫な木を検索してくれてる。眼下を見れば広がる森をスキャンして、そしていくつかの候補をわかりやすく赤く塗ってくれるのである。
最初は上手く出来るのか不安だった。だって魔王と勇者いるし……なんかこの二人、私の子とスゴイやつって思ってる。確かにすごいが、それはこのG-01がスゴイのであって、私は別にすごくはない。あんまりまだわかってないし、うまく出来なくて二人に失望されてもね……なんか癪じゃん。けど色々とG-01の親切設計によってそれは回避された。
今では木々を跳ぶのが楽しい。だからだろう。私はちょっと調子に乗ってた。跳んで跳ねて、跳んで跳ねてを繰り返す内に、どれだけ飛距離を稼いで次に美しく跳べるかを勝手に追求しだした。勿論ただの自己満である。無駄に回ったり、クルクルしたりした。
当然肩に乗ってる二人から苦情が飛んできたがそんなのは無視である。
「よーし、今度はもっと、もっと飛ぶよ!」
このG-01と言う体は私の思いに応えてくれる。だからどこまでやれるのか試したくなったのもある。私は今まで一番の大ジャンプをした。肩の二人が振り落とされないように、必死にしがみついてる。青い空をまさに私は飛んでいる。けど……眼下には何故か木々がなかった。あれだけ続いてた森がぽっかりと無くなってる。どうやら一部ではなくかなり広範囲にそれは続いてる。
それに今までの場所よりも低くなってる? もしかしてここは境目なのかもしれない。今までの森と、あの森の集合体への境目……だから――
「って、ブーストー!!」
私は背中と足にあるブースターを噴射させて推進力を得た。色々と考えてる場合ではないからだ。とりあえず、森がある部分に着かないと落ちてしまう。木々がないところは大きな滝になってた。こんな状況じゃなかったら、それこそその雄大さに小一時間くらい干渉してたいくらいだ。
でもだめ。
「ぬあああああああ届けええええええええええええええええええええええ!」
私は必死にブースターを噴射させて手を伸ばす。何やら周りからブーブーと言う音が聞こえて、モニターにはブースターの箇所が何やら危険らしい表示が……確かに背中と足が熱い。でもここで止めるわけには……
ボフン――
そんな気の抜けるような音と共に、五月蠅かった音が止まった。それと同時に、滝にせり出してた枝をつかみ損ねる。魔王と勇者も働いてよ! とか思ったが、私のアクロバティックな迷惑な技のせいか、二人ともグロッキーな状態でそれどころじゃなかった。
これが自業自得と言う奴か!! 私達三人は大地の切れ目ともいう底へと落ちていく。