uenoutaの日記

好きなものを描いたり、買ったものを紹介していきます。

転生したらロボットの中だった(ただし、でることはできません)輪廻の輪の外へ 18

 光が収まる。アクチュファーの反応時間が過ぎたようだ。
 
『まさかアクチュファーをこんなことに使うとは……ですね』
「いや、あんたが自分でやれって言ったんじゃん」
『確かにそうですね。なのでこれ以上は言いませんよ』
 
 AIは何か不満そうである。一体何が不満なのか私にはわからない。だって光りたいと思って思い浮かべて出てきた事をやっただけだ。そしてちゃんと結果も得られた……得られた? しまった光って満足してたけど、よく考えたら魔王と勇者に位置を知らせるのが目的だった。
 
 あいつら自信満々で大丈夫とか言ってたくせに、いつまでたっても戻ってきやしない。本当にダメな奴らだ。私が居ないとほんと時間も守れないとか小さい子供でもないのに、もっとしっかりしてほしい。
 
「……で、あれ何?」
 
 私は地面に横たわってピクピクしてる気持ち悪い生物をみる。いや、はっきり言って見たくない。見たくないけど、イヤでも目に入る程にいるんですけど? 一体どういうことだろうか? だってこの深淵ははっきり言って何もない。見晴らしもすこぶるよろしい。こんな気持ち悪いの、一体いるだけで釘付け間違いなしだ。
 
 こんな長い胴体に、無数の手足がついたような生物。脚だけいっぱいかと思ったら、短い手もいっぱいある。しかも人の手だ。更に言えば、なんか丸っこくて瑞々しい。いうなれば、幼児の手のような感じである。でも体部分は気持ち悪い、紫をどす黒くしたような色してるからね。なのに手だけ瑞々しい肌色っておかしいでしょ。更になんか先端からは紫の液体流してるし……気持ち悪。
 
 閉じられてるそれは口なのか目なのか……それとも耳? わからない。けど、胴体をぶった切る様に線が入ってるから、この体と同サイズの口か目か耳があることになる。うん、やっぱり気持ち悪い。
 
 こんなの殺風景な場所にいたら、ぜったいに見逃すわけがない。寧ろ二度見するよ。絶対に。しかもそれが一体じゃなく複数。いや、これはもう無数と言って良いんじゃない? って位はいる。居ると言うか倒れてるが。
 
『この生物はアビスですね。深淵に掬う者達です』
「へえ~害はないわけ? なんか皆して寝てるけど?」
 
 ピクピクしながら寝るのは止めてほしい。自分たちの姿が気持ち悪いってわかってる? わかってないよねきっと。だってどいつもこいつも同じ姿してるし、ここ深淵にはきっとこいつらしか居ないんだろう。そうなると自分たちの姿をキモいなんて思うわけ無い。
 
 私ならあんなのの中にもし入ってたらと思うと、その場で自殺するね。よかったG-01で。なんだかんだいってここは快適だしね。アビスの中とか、絶対にドロドロでべちゃべちゃしてそうだ。
 
『あれは寝てるわけではないと思いますが……』
「そうなんだ? けどこんな奴らがいたとなると、やっぱり何かあったんじゃない? てか二人ともこいつらに食われたとか?」
 
 それは大変だ。だって無数にいるこいつらからたった二人を見つけるのは難しい。二人とも小さいからアビスをかっさばいてる時、間違ってバッサリ……とかなる可能性もある。けどこの数のアビスを一体一体慎重になんて私の根気が持たない。
 
 どうにかこいつら食べられてなければいいけど……そんなことを思ってると、AIがこういってくれる。
 
『アビスは何かを食べる事はしません。アビスはただ深淵で覗くのです』
「覗くって何?」
『それはわかりかねます。調べてみてはどうですか? アビスは特殊なので、もしかしたらサンクチュアリを持ってるかもしれません』
「でもそれって特殊な奴だけなんでしょ? ここに居るアビスって全部同じ感じだけど……」
 
 何も食べないのなら、とりあえず魔王も勇者もこいつらの体の中に居ることはないって事だ。それはよかったが、このアビスの中にサンクチュアリを持ってる奴がいるのかな? 確かにこの世界で初めてであった生き物? かもしれないが、なんかこいつらには会ってほしくないっていうか……
 
「とりあえずこんな奴らがいるなら、魔王も勇者も危ないかもだし、先に見つけに行く!」
 
 私はそう言って走り出した。それにAIは何も言わない。私は二人の無事を願ってるよ。