「うへーあっ」
気持ち悪い感触に辟易してると、なんかアビスがボロボロと崩れていってその姿がなくなった。なにこれ? 存在そのものが消えたかのように、塵すらも残ってない。気持ち悪い上になんて哀れな存在だろうか。けどこれじゃあ、調べるどころではないな。
触ったらダメなのかな? それとも持ち上げたのが、刺激になってしまったのだろうか? 無数のアビスは今だに消えずに地面に倒れ伏してる。既に数十分単位でこの態勢な筈だけど、崩れないところを見ると、やっぱり私の刺激の与え方が悪かったのだろうか?
とりあえず今度は慎重にふれて見ることにした。近づいて、姿勢を落として、そしてまずは指先でチョンチョンとやってみる。
「大丈夫かな? ――うげっ」
崩れないと思ったらその思いに反して、チョンチョンって程度の刺激で崩れだした。チョンチョンしたところから崩壊が始まってそのままそのアビスの体は消滅した。
「おいおい、調べようがなくない? スキャンとか出来る? あ、出来そう」
まあジャンプで森を大移動してる時も、スキャンに似たことやってたし、出来そうと思えば出来た。なんか画面がカラーから、色が抜けた感じになって、緑色の線が走ってる。スキャンモードみたいなものかな? 私はとりあえずアビスを観察することにする。はっきり言って観察なんてしたくないが、今ここにある物ってこいつだけなんだよね。
背に腹はかえられないって奴だ。こいつから情報を得ないと魔王と勇者の助け方がわからない。それにここに居るのがこのアビスだけなら、こいつがなにかこの深淵からの脱出方法をしってるんじゃないだろうか?
(でもそれって望み薄?)
こいつらはここに居るだけの存在かもしれない。てか、そこに居る奴らが、都合よく自分の望みを与えてくれるって事はリアルではそうそう無いのではないだろうか? だってこいつらって深淵に掬う奴らなんだよね? それって深淵以外には居そうにないし、つまりはこいつら脱出方法なんて物はしらないっほうが高そうな気がしてきた。
「ううーん」
さっきからスキャンしてるが、はっきり言って何が表示されて、何が導き出されてるかすらわからない。これの意味があるのか疑問だ。いや、AIは多分わかってる筈だ。けどさっきから何も言わない。何か意図があるんだろうけど、わかってることはさっさと伝えてほしい。
「とりあえず体は内臓も何もないねこいつら」
それはわかった。一体何を食べてるのか……そもそもアビスとは生物なのか……疑問が生まれた。
「ん? なんか目だけやたら情報両多いな」
そんなことに私は気づいた。