「おいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
俺の腕がとれ……とれ……とれれれれたああああああああああああああああああ!! そう叫んだ後、残った右腕を俺は握った。そしてその拳の中に光が集う。
『ダメです!』
「うおおおおおおおおおおおおおお!!」
聖剣アルバラードの声も聞こえずに、俺は拳の力を解放した。振りかぶった拳から、聖なる力が吹き荒れる。でも……
「なん……だ?」
前に出ない力。寧ろ俺の腕で、この場で力が吹き荒れてる。そして自分の力によって自分の体が破壊されていく。でも別に血とかが出るわけじゃない。ただ崩壊が進むだけだ。すでに俺には肉体がないからだろう。今の俺は魂だけの存在だ。だからこそ傷みさえもない。
でも……傷みの代わりに薄くなっていく。自分という存在と、この自分という存在に残ってた記憶がだ。
(俺は……本当の意味で死ぬのか?)
聖剣アルバラードは僕にこの変な存在の中から同じような存在を感じろと言ったが……それはどうやら無理のようだ。既に意識が混濁してきてる。
『思い出しなさい! アナタはもとの世界に戻りたくないのですか!』
アルバラードの激しい声が聞こえる。でも……それでも……どんどんと薄くなっていく自分では震える物はない。空っぽになっていくのがわかる。今の俺は頭と首と肩くらいしかもうない状態だった。そして頭の部分もどんどんと崩壊してる。
『このままではダメです。アナタとして復活できません。保ちなさい、そして伸ばすのです。腕じゃなくてもいい。アナタの意思を目指す場所へと伸ばしなさい!!」
(目指す……場所……)
それはどこだったろうか? もうあまり思い出せないけど、そこは俺にとって、光溢れる場所だった。そうあんな風に。
薄れ行く意識の中で光だけが見えてた。それだけが、爛々と輝いてる。他にはもう何も見えない。だからこそ、ただ本能だけでそれを俺は目指す。目指すというか……求めた。
「あ……う……」
言葉にならない声しかでない。腕だって本当はない。でも……其れさえわからなくなってるからこそ、今ある存在全てをその光に伸ばす。自分自身の崩壊と、その光にたどり着くのが先か……でも恐怖さえ忘れてた。崩壊もなんのその……自分自身の姿がなくなった時、細い糸の様な残滓だけで、俺はそれへとたどり着いた。
『願い……いいえ、心に従いなさい』
どこからか聞こえてくる声。心……それさえ既にわからないが、でも溢れてくる何かがあった。だからそれに従う。それが自分のしたいことだったから。