そこは地獄だった。アズバインバカラの一角に空から落ちてきた巨大なサソリ。それはまさに天災と呼ぶべき災禍。サソリがおちてきた一角は地獄絵図とかしていた。いきなりの空かの衝撃で何棟もの建物が崩れ落ちてそれによって巻き込まれた人達は生き埋めやらなにやら知らないうちに天に召された人も多く居るだろう。
子供の泣き声や、大の大人の叫び声……そして木霊するサソリの不気味な音。奴がその複数の脚で一歩を踏み出す度に、新たな死傷者が増えている。
あんな奴に踏まれたら人などあらがう術はない。その重みで骨は砕け、内臓は破裂して、それこそ肉体はただの水風船みたいにパシャ――とはじけるだけだ。
「これは酷いわね」
思わず動きだしてしまったけど、あの大きさじゃ魔王も勇者もきついだろう。てか私よりも相当でデカいよ。本当なら二人を剣にしてぶった切りたい所だ。きっと気持ちよく斬れるだろう。堅そうだけど、二人が会わさった剣はかなりの力を有してるしね。
でもここで二人が何か変な物……と思われるのもね。
「あれやれる?」
『どうでしょうか……硬度はかなりの物です。武器が無くては厳しいかも知れないです』
AIはそういうけど、あと武器って言ったら、ナイフくらいしかない。流石にナイフの刃渡りじゃきっと中の肉……あるかわからないがそれまで届きそうにない。まあどうにかなるか。地上では武器を持ってる奴らが必死にサソリに応戦してる。
でもその攻撃は殆ど……いや、全くきいてない。この世界の人谷とってもあんな大きさの砂獣は初めてなのかも知れない。いきなりゲームバランス崩す敵が現れた感じかな? それはご愁傷様としかいえない。でも運がいい。なにせ私達がいるんだからね。
私は振り下ろされた脚を地面につく前に殴り飛ばす。
「おらあああああああああああ!!」
けど一個の脚を殴った所でバランスを崩しはしないか。邪魔な私を排除しようと、サソリは尻尾を向けてくる。先っぽについたそのトゲで串刺しにする気だ。けどそれは避ける。
「あっ」
せっかくさっきの脚に踏み潰されそうだった人達が次の尻尾のトゲの攻撃で跡形もなくなってた。刺さりすらしない。
『注意力散漫ですよ』
そんな指摘をAIから受けた。確かに今のは避けるんではなく、受け止めるべきだったか……
「お……お前のせいだああああああああああああああああ!!」
とりあえずサソリを攻撃することに私はした。