「ここが……あの……」
「ジャルバジャル……惨いな」
静の時間を経て数時間。俺達はジャルバジャル跡へとたどり着いていた。そこは俺達がこの世界に降り立ったときと変わって無い。ただ砂が広がっている。所どこに建物の屋根だった部分が見えるが、この光景を見てもここに街が広がってたなんて事は思えない。でも俺や魔王はそんな程度の感想だが、ここに街があったことを知ってるこの世界の人達の反応は違う。流石にショックが大きいようだ。
「街がなくなるって事はそうそうないんですか?」
「まあこの規模の街はそうそう無いですよ。旦那達はわからないでしょうけど、ジャルバジャルはかなり大きな街だったんすよ」
「小さいところはそれこそ日常茶飯事ですけどね」
賞金稼ぎの奴らはそう言って教えてくれる。てか小さいところとかあるんだ。だってこれだけ厳しい世界だ。固まってないと危ないなんて誰だってわかるだろう。それに殆どを砂で埋め尽くされてる。水が取れるところだって限られてるのに……大きな街以外にいる人達はどうやって生活してるんだ? 謎すぎる。
「おい、無駄話をしてる場合じゃないぞ。お出迎えだ」
魔王の奴が視線を前方にやったまま獰猛な瞳をみせる。平坦だった砂が盛り下がっていって穴のようになってる。そこから次々と黒い物体が出てきた。砂獣だ。でも前見たときよりもナニか……形とはしては蟻がデカくなった感じでここで前にみたときの奴と同じタイプに見える。でも……何だがその体がより大きく、そして頑丈になってるかのように見えるぞ。更に背中にナニか背負ってるタイプも居る。
「何だあれは……」
軍の人もあんなのを見るのは初めてなんだろう……声が震えてる。
「おおい! さっさと倒すんだ! そして都市核を回収しろ!!」
ただ叫べば良いだけのどら息子は楽で良いな。少しはこいつは作戦とか提案しないわけ? 本当に何の意味があるんだ? 帰ったら絶対にバジュール・ラパンさんに文句を言おう。だって絶対に帰ったらこの作戦の手柄が全部、このどら息子の物になりそうだもん。手かその為にきっとこいつはついて着たんだろう。ただのお飾りなのに……部隊のトップにいて手形だけは独り占め……俺達の世界にもそういう腐った奴らはいた。
だが、バジュール・ラパンさんは腐った人ではない筈なんだが……そこがわからない。
(もしかして……始末したい?)
俺はその考えに至った。愚か者でないバジュール・ラパンさんの愚かな息子……父親が愚かでないのなら……その愚かな息子をどうするか。腐っても親子だ。自分で手を下すのは忍びないと思うものだろう。でもこの危険な任務でもし……もしも最悪なことが起きたとしても……それの了承くらいこのどら息子自身にバジュール・ラパンさんなら取ってるんでは? そう思える。なにせ俺が知ってるバジュール・ラパンさんは立派な領主だ。そして領民全てのことを想ってる人格者。ただ一人の息子のために愚かな行いはきっとしない。
(なら……もしかして)
俺は周囲の軍、そして賞金稼ぎの奴らに目を光らせる。でもその動きはない。もしかして俺達に頼んでないのなら、この中にその任務を極秘で頼まれた奴がいてもおかしくはない。そう思ったが……まあみてわかる訳はないか。それに……別段止める気は無い。俺は勇者だけど……俺が救うのは救う価値のある奴だけだ。