「全部倒しても良いんだろう?」
「お前……そのつもりしかない癖に何いってんだ?」
魔王の奴のそんな発言に俺は呆れて返す。だってこいつが獲物を前に自重なんてする訳がない。魔王は猛獣だからな。周りの奴らはいつもよりも強力そうな砂獣に及び腰になってる。なにせいつもの丸みのあるフォルムから刺々しさと頑丈さが明らかに上がってる。
だが、魔王はそんなの気にしてない。いつもはやりすぎるなって止めるところだ。なにせ俺たちはまだ自分たちの力を操れてはいないんだ。とにかくできることが増えて、そして力の総量が飛躍的に増えた。力が強くなったが、それは同時に危険でもあるって事だ。
俺達は存在から強くなった。既に一世界の魔王と勇者ってだけじゃない。そんな壁、とうに飛び越えてる。下手したら世界を壊す事だって可能……かも知れない。
(いや、きっと出来る)
だからこそ、無闇に力を使うのは危ないって思ってる。でも今は……今この瞬間は良いだろう。まるで暴れるためにお残だてされてるかのような状況だ。砂の中から次々としら現れてる砂獣はエグい数になっている。どう考えても俺達がやらないと……そうしないとこの世界の住人だけでどうにか出来る数じゃない。一応今日までで軍の練度や、そして賞金稼ぎの皆の実力って奴は分かってる。
勿論全てをみせてくれたわけでは無いと思ってる。だが……飛躍的に上がる何かがあるとしても、きっとあの数は厳しい。それだけの数。百・二百じゃ足りないぞ。
「はは!! 久々にこの魔王が蹂躙してやる!!」
そう言って魔王は飛び出した。
「魔王様ああああああ!!」
そう言って叫ぶのはどら息子だ。寧ろあいつだけだ。心配してる? イヤ当然か。どうやらどら息子……全く戦えないようだからな。腐った金持ちのボンボンらしく、どら息子の体型は横に太い。戦えるような体じゃない。親であるバジュール・ラパンさんは年を召してるのに引き締まった体をしてると言うのに……
「おおおあああああああああああ!? 貴様等、魔王様を助けろおおおお!!」
飛び出していってそして砂獣の陰に消えていった魔王。真央が消えたところに砂獣達が集まっている。それを見てどら息子は不安になったんだろう。いや、それはどら息子だけじゃない。もしかしたら魔王ならあるいは――って思ってた皆が青くなってる。
「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおお魔王の兄貴に続けえええええええええええええええええ!!」
――え?」
怖じ気づいてた周囲を鼓舞するためか、そんな声を一生懸命一人が上げた直後……赤い柱が空に上がった。そしてその光に押し上げられていく砂獣達が空で……そして地上に落ちて燃え尽きていく。
「この程度か? 貴様等は……」
光の柱野中心で、魔王がそんなことを一言言った。