「ぎょいしい。ぎょいしいぞ! おまえ……ら、ぎょいしい!」
「倒せ! それを速く攻撃するんだ!!」
儂は急いでそう急かした。あれはヤバい。まずい何かだ。とういか不味い何かが、起こったような……そんな勘が働いた。あれは今すぐにでも倒した方が良い。幸い今、あれは頸だけだ。もう移動も出来ないだろう。切り刻めば終わる。そう思った。
「あ……おい……不味いぞ」
賞金稼ぎの一人がなにやぱそんな事を言いおる。その顔は驚きを隠せてない。今、あの頸から視線を外すのはイヤじゃが、実際背後から危険な感覚がビンビンきてる。後ろを見ると、頸から上がなくなった胴体だけの砂獣が立ち上がってた。立ち上がってると言っても、前傾姿勢でフラフラとしてる。まるで頭を求めてるかのよう。でもそれよりもあれが立ち上がってるっていうことが問題じゃ。
獣のように四足で動いてたあれが二足歩行に進化を果たした。これはいったいどういう意味じゃ? まさか……頭を食べたことでその記憶とか体の動かし方を学んだ? そんな事が?
「あがあああああああああああああああああああああああ!!」
頸の方がそんな大声を上げる。その音の圧に武器を持って迫ってた奴らの足が止まる。というか、なんか体が動かない。何か声に込められた? 不味い。この隙に攻撃をされると流石に防げん。そんな事を想ってると、体の方がおおきく砂を蹴ってジャンプした。舞い上がる砂で何も見えなく成る。そして続けざまに背後に落ちたような音と振動で更に砂が舞う。視界が完全に奪われた。
「全員落ち着け! しっかりと全周囲警戒!!」
どんな些細なことも見逃さないように、全神経を集中する。すると次の瞬間、砂の中から大口を開いた砂獣が迫って来た。儂はその口に刃を突っ込む。だが奴の歯でそれは受け止められた。
(こやつ、頸が――)
戻ってる。でも食った脳を生かし切れてはない。何故なら、二足歩行してるのに、こいつは腕じゃなく、口を使ってる。多分それが本能なんだろう。でも安心は出来ない。こいつは今確かに二足歩行をしてる。なら、この腕だって、気付いたら使ってくるようになる。そうなると……かなり厄介じゃ。ここで確実に倒さないと不味い。儂とやつの力は拮抗してる。いや、このままでは曲剣が砕かれる。僅かにヒビが見えてきてた。
そうなる前に動く!!
「ふっ!!」
儂は剣を手放した。集中して力を拳に集める。そして懐に戻りこんでまずは一発! やつの体がねじれるくらいの一発をその腹に叩き込む。だがまだまだだ!! 儂は息をするのも止めて、拳や蹴りを叩き込み続ける。そして一瞬、やつの体から力が抜けたその瞬間に胸の都市核を掴んだ。
「我らが街の力、返して貰うぞ!!」