「んん~!!」
大きなお肉を口に含むとそんな声にならない声が漏れる。もう一つ……更にもう一つ、飲み込む前にどんどんと口に放り込んでしまう。お肉は今までに食べたことがないくらいに柔らかくて、幾ら口に入れても問題ない。だってそれでも噛めちゃう。気持ちの良い食感だ。
私は今まで食べた中で一番だと言える肉だ。周囲の子達も一心不乱にお肉を食べてる。野菜とかもあるし、パンとかもあるけど、私達が群がってるのはお肉だ。
「うめえええええ!!」
「うめええええよ!!」
男の子達は口の周りに肉汁をつけながら食べてる。私も普段の格好ならそうなってたと思う。けど今は私はドレスだ。流石にこんな高そうなドレスを汚すわけには行かないから、ある程度は自重してる。高い天上に広い空間。そこに大きな丸いテーブル(これも見たことないくらいに綺麗)があって、沢山の料理がデデデンって置かれてる。私達はテーブルの周りに置かれた椅子に座ってテーブルを皆で囲んでる。
それぞれ後ろに女の人がついてて、欲しいものを小皿にとってくれるシステムみたい。最初は皆どうしたら良いのかわかんなかった。それにわざわざ綺麗なお姉さん達にそんな事を頼むなんて……私達にはそんな文化はない。でもそんな遠慮も最初の料理を口に運ぶまでだった。
一口料理を口に入れると、もうあとは今の内に食べておこうって思考に皆なったようだ。それはそうだよね。だって私達はいつだってお腹空かしてるし。私の様な孤児はそんな者だけど、普通に両親とかいる子達だって、毎日お腹いっぱい食べられるかと言えばそうじゃない。なにせそんなに食料が豊富じゃないからだ。肉なんて、そうそう食べられるものじゃない。しかもこんな美味しい肉はなおさらだ。
私達の主食はサボテン肉だ。砂漠には背が高いサボテンがなってる。それ。それは街でも栽培してて、なんと、一晩で大人の身長くらいになる。水分もあって、果肉は分厚く食べ応えはある。けど正直美味しくはない。なにせ味はないも同然だからだ。そこは料理人の腕の見せ所なんだろう。一応この食卓にもサボテン肉はある。でも誰も手をつけようとは……
「うむ今日も良い味だ」
そんな事をいってこの数ある高級そうな料理の中でラパンさんがサボテン肉の料理を食べてた。信じられない。だって、それって私達でも食べられるものだよ? それをこの街で一番偉い人が食すなんて……そうなるとなんか気になる。私がそわそわとしてたのを見てたのか、私についてる女の人がそれをよそってくれる。切り分けて少しだけ。
実際サボテン肉の料理だと言っても、私の知ってるそれではない。大体そのまま焼いて調味料をかけるか、切り分けて、料理の嵩増しに使うかだけど、これは明らかにサボテン肉がメインだ。サボテン肉の間に何やら挟まってるようで、更に上から見たこともない色のソースが掛かってる。
私はとりあえず一口サイズに切り分けられたそれを口に運ぶ。
「ん!!」
私は思わず口を押さえた。するとそれを見てたのか、ラパンさんと目が合った。そしたらウインクをしてきた。美味しいだろう? ――って事だろう。私は頷き返して、更にサボテン肉の料理をよそってもらった。それはとても幸せな時間だった。