「え?」
宴もたけなわ……そんな声が聞こえそうなお腹もいっぱいでドレスでもわかる位にぽっこりと出てしまったときに、私の側にはラパンさんが居た。そして予想もして無かった事を言われたのだ。
「私がここに……ですか?」
「ああ、いやかな?」
「でも……私はこんな所に住む資格なんて……ないです」
そう、私はラパンさんからこのおっきな宮殿に住まないかって言われた。思ってもなかった提案だ。だって私は今夜のこれは一回だけの夢みたいな物なんだろうって思ってた。でももしかしたら、私がここに住めば、もしかしたらいつだってこんな生活になるのかな? それはちょっと興味ある……でも怖くもある。だってお父さんとお母さんがよく言っていた。
『上手い話には裏がある』って。
「えっと、裏はなんですか?」
私はストレートにそんな風にラパンさんに聞いてた。しまったと思ったけど、発言は取り消せない。そんな私の発言にラパンさんは「ははははは!」と笑う。どうやら相当おかしかったらしい。ううー私は恥ずかしくなっちゃうよ。
「たいした肝だ。そうだな、そこまで真っ直ぐに聞かれたら教えよう」
そう言ってラパンさんは私の耳元で私にだけ聞こえる声を出す。
「実は君を今預けてる孤児院は協会の息が掛かってる。今君をあそこに戻すと、またあの怖い人達が君を求めてやってくるだろう。いや、既に奴らは君の帰りを待ってる」
「ひぇ……」
私はゾクッとしてそんな声を出しました。だってまだ私なんかにこだわってるって……どうして? わからなくて怖いよ。そっか……あの怖い人達がいるなら……孤児院には帰れないよね。それに私には頼れる人達なんてのはいない。いたらそもそも孤児院なんかにはいかないし。
「院長は話しかわかる奴だが、立場的には本部の奴らに逆らうわけには行かないだろう。なら、君を戻さないほうが一番だ。どうかな?」
「はい……」
私は頷いた。だって皆の頑張りで私はまだここに入れる。それなのにそんな皆の頑張りを私のわがままで無駄になんて出来ない。それに単純に怖いし……
「必要な物は後日、別の者に取りに行かせよう」
私はふるふると首を振る。大切な物なんてあそこにはない。必要なの物はただ一つ。私は首に下がってる小さなアクセサリーを握る。
「これだけあれば良いです」
これはお母さんの形見だ。これだけ、あの現場から届けてくれた人がいた。後は私には何も大切な物なんてない。だから……孤児院に戻る必要なんて私にはなかった。
「わかった、君の部屋はもう用意してある。あと少しで宵だ。皆に挨拶をしてくるといい」
「はい!」
私は皆に事情を話す為に子供達の輪に加わる。大半が私の事をうらやましがった。それはそうだよね。だって明日からこの大きな建物が私の家だ。私も実はワクワクしてる。怖くもあるけど……でもそれよりも好奇心でワクワクだよ。
こんなワクワクで宵に寝れるか不安だ。けどそんな心配は杞憂だった。私は次の日、ふかふかのベッドで目が覚めた。