「もしかして、こいつ強い?」
『そうですね。もしかしなくても、貴女がジェルルランジの力をアホほど集めるから強力な個体が出来上がった様です』
「やっぱり……」
今までの砂獣は簡単にプチって出来たもんね。でもこいつはG-01に抵抗してる。まあ驚異……とは感じないんだけど、なかなかに衝撃だよ。そう思ってると、頭がヘビ、体が馬、そして黒い翼をもったその砂獣は首の所を大きく膨らませてる。
「なに、ビームかな?」
『ワクワクしない』
なんかAIに窘められた。良いじゃん、ちょっとくらいワクワクしても。なにせなかなかに面白い存在だよ? そう思ってると、砂獣は私に向かって黒い霧を吐いてきた。
「煙幕!?」
『どうやら逃げる気の様ですね。本能的にこれには勝てないとわかってるのでは?』
「そんなの困る!」
そう困る。だってここでこいつを逃したら、どうなるかわかった物じゃない。どっか別の街で被害出したりしそうじゃん。アズバインバカラとジャルバジャルは勇者も魔王もいるから、あの程度の砂獣には後れは取らないだろうが、そのほかの街なら、あの砂獣だけで蹂躙できるんではないだろうか? しかも見た目あんなんだし、小さいし、侮ってたら、圧倒いう間に壊滅……なんて事になったら……私は知らんぷりを決め込むしかないよね。
「大丈夫大丈夫どうせバレないし」
『逃がした先の事よりも、ここで捕まえることを考えた方か建設的では?』
AIの言うとおりだね。てかG-01から逃れられる訳ないのだ。そっちの感覚的な物なんか軽く凌駕するハイテクの塊だよこっちは。私はセンサーを全稼働させる。すると、はっきりと砂獣の位置が見える。それは肉眼でもそうだけど、モニターのマップにも表示される。なかなかの速さでこの場から離れてる。てか翼有るのに飛ばないんだね。飛べばもっと遠くにいけそうなのに。まだ産まれたばかりだし、飛ぶのは慣れてないのかも?
「逃がさないよ」
私はそう言って、砂を蹴った。
「んん!?」
するとG-01の体がぴょーーーーんって効果音が出そうな程に軽ーく浮いた。まるで風船みたいにフワーとした感じ。
「何これ!?」
そんな事を言ってる間にも、砂獣はどんどんと離れていく。この程度の距離、いつもなら一足なのに!! なんかなかなか地面につかない。さっきの勢いがなくなるまではこうやってゆっくりと進み続けるだけ?
「何が起きてるの?」
『どうやら機体の重量を操られてた様です』
「どういう事?」
『つまり今、G-01は軽くなってます』
「軽くなっただけでこんな風には成らないでしょ!?」
『そうですね。ですが、何か力が働いてるのでしょう』
曖昧な……でもAIもわかってないから曖昧に返す事しかできないのだろう。
「なら背中のブースターを使って――」
『止めた方がよろしいかと』
「――んきゃあああああああああああああああああ!?」
忠告の前に使ったら、めっちゃ縦横無尽に進んだ。てか完璧に制御不能だった。
『この状態ではそうなりまよ。姿勢制御もメチャクチャなのです』
「はやく言ってよ……」
文句を言ってる間に砂獣はどっかに言ってしまった。砂しか見えないなか、私は――
「しーらないっと」
――今の出来事はなかった事にした。