「おっ、出てきたね」
遠くから観察してると、豚ナメクジの前に別働隊が出てきた。そしてそいつらは、槍を構えた。両手に持ってグッと踏ん張る感じじゃないよ? 皆一斉に『投げ』の構えを取ったのだ。マジで? 腕力でやるの? アズバインバカラでは弓使ってたよ? それか連係で上手く近接して一撃必殺してた。まあそんなに成功率高くなかったけどね。
まあ確かに威力が充分あれば、アレが一番簡単なのかも知れない。なにせ槍っていっても、木なのか、岩なのか、それとも砂獣の外殻を鋭利に尖らせた奴なのか、簡単に加工できなそう代物を皆握ってる。まあ加工は簡単そうだけど、どれもそんなに手に入りやすいものでもないけどね。なにせこの世界は大体砂漠だし。
でもだからこそ、簡単に加工できるのは大切? 迫ってくる豚ナメクジに一斉に槍が降り注ぐ。いや、その表現は正しくないね。降り注ぐなんて行ったら、なんかアーチ状に槍を投げるみたいだもんね。はっきり言おう、槍は一直線に飛んでいった。おかしいな。この世界にも重力はあるんだけど……そんな物ねえ! と言ってるかのように槍は真っ直ぐに進んだ。そして豚ナメクジが方向転換をするよりも早く、ブッ刺さる。上手く顔面にめり込んだら豚ナメクジは絶命して、そのままの姿で残る。下手箇所に当たると絶命しないから、死ぬまでの間に、自身の体をドロドロにして消えてしまう。
「なかなかやるじゃん」
半数以上の豚ナメクジはそのままその場に残ってる。これなら大豊作ではないだろうか? きっと今日はいっぱ食って騒ぐんだろう。
「あれ、なんかそんなに喜んでない?」
半数以上の獲物を捕らえられたなんて狩りでは大豊作なのに、何故か豚ナメクジを追いかけてた人達は歓喜の一つもあげない。いや、ちゃんと見てみると、一人一人喜んではいる。でも、テンションはどこか低い。これがアズバインバカラの奴らなら、その場で踊り出すまであるのに……やっぱり街によって人の気性とかちがうんだろうか?
気性が変わる程に離れてるのかって感じはするけどね。まあこんな世界だし、街の外に出るなんて事普通の人はないし、それぞれの街で特色が出るのはわかる。
「さて、どうしよう」
このまま隠れて見てても何も始まらないんだよね。でもだからってG-01が出て行ったら、普通腰抜かすよね? 味方と思われるだろうか? 新型砂獣とか思われそうだ。なにせ最近新型が出てきたわけだしね。とりあえずなんかあんまり嬉しそうじゃないのが気になるし、バレない距離からしばらく見てようかな。
彼等は収穫を荷台に乗せていく。でも想定よりも取れ高が多かったのかたりない。どうやら詰めるだけ詰めて、進んで、先行させて更に街から荷台を持ってくるらしい。その間に獲物を守る為に何人かをこの場に残してる。
いつ砂獣が現れるかもわからないのに……貧乏くじを引いた人は可哀想だね。私はとりあえず先行して行ってる人達にバレないようについていくよ。きっと彼等が向かう先に街があるはずだしね。今度はどんな所なのか楽しみだ。