中央という都市は空と溶け合うように聳えてる荘厳な都市だと思う。俺が前にいた世界の王都とか帝都とか呼ばれてた都市だって比較しても遜色……いやそれどころか、上回ってるまであるだろう。
なにせこの中央だけ、他の街とかけ離れている。別世界みたいたな感じだ。確かにこんな都市で育てば、他の街なんて格下に見えてしまうのもわかるかもしれない。なにせこの都市の住人は大体は地上から離れてる。だから未だに地べたに這い回って生活してる他の街の人達が遅れてると思ってるんだろう。
いや、なんかそういう風に聞いただけだが、ラパンさんが言ってたから本当だと思う。まあ流石に全面的に信じてはいないが……一応この目で確かめるまでは……な。
でもここまでの道中も、馬車なんかを引いてる俺達を結構な目でこの都市の人達は見てたと思う。けどそんなきらびやかなこの都市も一度下まで降りれば、此の有様。
彼らは多分、この現状さえしらないんじゃないだろうか? 人は……見たくない物はみない。見たいものだけを見る生き物だ。勇者をやってた俺はそれをよく知ってる。
最初に門をくぐった時はこんな風に成ってるなんて気づかなかったが、それは多分、門まわりだけはちゃんと管理してるから……なんだろう。それ以外の奥の方の地面に面した部分は手つかずというか……何もやってないみたいな。
壁はボロボロだし……そもそもが土地が痩せてる砂漠の世界だ。それなのに、地面は固く舗装してあって……いやここはボロボロだけど……ただでさえ、ない食料をここにいる人たちは育てる事も出来ない。
「このままじゃ、この中央自体が崩壊するんじゃないですか?」
俺は思った事をそのまま言った。普通に考えたら、誰でも簡単に想像できることだと思う。別に中央は浮いてるわけじゃない。下を土台に積み上がってるのだ。いや、結構上の方は、どうやってその重量を支えてるんだ? っていう建物もあったけど……基本土台はここのはずだ。
その土台がここまでぼろぼろなんだぞ? 普通はヤバいってわかるだろう。下が崩れれば、上も崩壊するってのはすぐにわかる。砂で山を作ってみればいいから、子供だってそんなの知ってそうだ。けど……
「ふふ、勇者様は面白いことを言いますね。中央が崩壊するなんて、そんなのありえないですよ」
クスクスと笑いながら、ローワイヤさんはそういう。まるでそんな事は起こり得ない事の様に……だ。彼女は本当に心底そう思ってる。別に俺をからかってる……なんて雰囲気でもない。本気でおかしな事を言った感じになってる。
「何か秘密があるんですか?」
この中央が崩壊しない理由。それのせいで、この中央の地上部分は全く改善されないのなら、それが何なのか興味はある。一体何が、この中央には施されてるんだ?