「まあ本当にそうなら、たしかになんの心配もないんだけど……」
そうなると、ここをどうにかするために動かす理由がね。別に建物が崩れないなら、それはそれでいいけどさ、でもここに住み着いてる人以下としか見られてない人たちはどうするんだ? この変質してしまった人たちだけじゃない……たくさんの人達がこの中央の一番下に落ちている。
「彼らに、加護はないんですか?」
慈悲でもいい。でもローワイヤさんとかは苦い顔をする。
「ここの人たちは反教者なのですよ」
「反教者? 神の教えに逆らったとか、異を唱えたとかですか?」
「ええ、そんな彼らにはこの地の人々は何も与えません。そもそも存在を意識することすらない」
「それなら、どこか他の街に移すとかすれば……」
ここで腐って死んでいくのと、他の街に移るの……どっちがいいかと問われると……ね。まあはっきり言っていい条件で別の街に行けるなんて思えないが……なにせ犯罪者みたな扱いらしいし、いや下手すると犯罪者よりもたち悪い。宗教と言うのはそういう物だ。
そうなると、奴隷とか死ぬまで肉体労働要因とかか? どうなんだろうな。
「他の街に反教者達を送れるわけはないでしょう」
まあ確かに。別の街に蔓延したら困るからな。
「小さな子ども達もいましたが、あの子達も反教者なんですか?」
「きっと親がそうだったのでしょうね」
そう言うだけで、別にその後に「かわいそう」とかの言葉は続かない。親がそうだったからって子供までこんな場所におくるのか? いや、親と引き剥がすのがどうかとか問われると難しいが……でもすくなくとも子供に罪はなくない? でもどうやらローワイヤさんや、仮面の奴らにそんな考えはないらしい。
「おかしい……と思わないんですか?」
「何がですか勇者様? 彼らは罰を与えられてるんです。行けない事をしたら、罰を受けるのは当然のことではないですか?」
「でも、少なくとも、何もわかってない子供だっているでしょう」
どうして自分がこんな境遇にいるのかわからない……そんな子供はいるはずた。それに罰だっていうのも……ね。
「罰とは等しく落ちる物です。そこに区別があってはいけないのです」
悪い事を一人でもやったら家族全部悪人的な事か? 頭痛くなるな……これが世界の違いか……
「この問題は根深いものです。勇者様が慈悲に溢れ優しい方とは存じてます。私もそんな貴女だからこそ……きゃ」
何言おうとしたのか、いきなり可愛い声出して顔を隠すローワイヤさん。
「こほん、この根深い問題は今は考えることではないです。まずは、目的の場所へ」
「そうですね。でもとりあえず既に中央に入ってるわけですから、余ってる食料くらいは置いていくくらいはしてもいいですか?」
ただの偽善だろう。ローワイヤさんもちょっと迷ったけど、俺が見つめると許してくれた。あくまで私は知りませんスタイルだったけど。とりあえず俺達は食料置いて、仮面の奴らを伴ってこの場所から離れることにした。