(まあ自分は多分毒とかでも大丈夫だと思う……)
最悪な。毒が入ってても俺は多分どうにでもなる。この体は少しの毒くらいでどうにかなるようなものとは思えない。寧ろ毒とか浄化しそうだし。
だから自分はいい……俺はローワイヤさんのほうを見る。
(消すなら、同時に……か?)
その可能性は高い。まあけど、さっきのあの黒い鏡の時は、標的を俺に絞られてた。流石に同時にあれをくぐるって事はないからだと思う。それにローワイヤさんだけなら、どうにか出来る自信はあるんだろう。
でも今となると、もう同時に殺さないと、色々と察せられるからな。俺とローワイヤさんを同時に殺る事を狙ってても全然おかしくない。
「どうしたのかしら? とっても美味しいわよ?」
そう言ってペニーニャイアンもお菓子とお茶をすする。でもそればさっき出したやつでもないしな。毒味に成ってないぞ。まあこいつなら、同時に出した飲み物でも、自分だけ助かるすべなんていくらでも作れるんだろう。
(こうなったら……)
「ありがとうございます。緊張してたのでありがたくいただきます」
俺はそう言って一気に煽った。マナー? そんなのは知らない。それに俺の様な奴にマナー求めてもらっても困るから、一気に俺は熱いお茶を流し込む。香りが高い、高級だろうと一味でわかるお茶だった。
でも味わってなんてられないから俺はすぐに飲み干した。
「いやーとっても美味しいです」
「あっははは、そんな風にペーニャの前で飲む人はじめてだよ」
なんかピローネの奴にはうけた。ペニーニャイアンはちょっと呆れた様な……下品な物を見る目をしてる気がする。でもすぐに取り繕った。
「ふふ、そんなに美味しかったのなら、更にどうぞ」
そう言って扇子を振るう。すると俺の飲み干したカップに再びお茶が湧いてくる。おいおい……
(でもさっき飲み干したやつは、別に毒はなかったな)
「勇者様……」
俺はそんな不安がってる声を出すローワイヤさんに視線を向ける。俺のは大丈夫だった……ならきっとローワイヤさんも大丈夫だと思う。
俺は頷く。もしも何か異変が見られたら、すぐに動ける様にはしとく。
俺の頷きを見てローワイヤさんもカップを持ち上げて、その唇に触れさせた。そして中身を口に含み、喉がコクコクと動く。
「懐かしい。随分久しぶりに飲んだ気がします」
「そうでしょうね。遠慮しなくてもいいわ。今はローワイヤが無事に戻って来てくれたお祝いなんだから。勿論、後で盛大に外部にもお披露目をしましょう。
巫女の存在はそれだけこの世界には重要ですからね」
「はい」
巫女……神託の巫女が実際なんなのか、ローワイヤさん自身もあんまりわかってないみたいなんだよね。自分がそういう立場で存在なのは小さなときからの教育でそういうものだと教えられてるが……でもだからって明確な役割があるわけじゃない。
ただ、時々お祈りしたり、協会の行事の行脚したりする程度らしい。神託とか言ってるが、神託を受けた事はないとか……でもこのペニーニャイアンは神託の巫女でもかなり重要な位置にいるらしい。
多分だけど、神託の巫女の本当の役割とかもわかってる。そしてさっきから気になってるピローネ。思ったんだけど……既にローワイヤさんの後釜にはピローネが入ってるんじゃ?
そうなるとローワイヤさんは邪魔でしかない。殺す理由になる。こうなると、そのお披露までに絶対に何かを仕掛けてくるだろう。てか外部に漏らす……なんて思えない。絶対にまた何らかのやりかたで俺達を殺しに来るはずだ。
油断せずにいこう……俺はそう気を引き締める。