食事に毒とはないみたいだ。バクバグと食ってる賞金稼ぎの奴らを見ればわかる。まあ遅効性とかだと此の場ではわからないかもしれないが……一応俺自身も口にも入れてる限り、毒はないだろうと思ってる。
もしかしたらこの世界の独自の特殊な毒とかだと俺でも感知出来ない物がある可能性もある……まあだがその時はその時だ。遅効性なら、とりあえずこの食事の後に回復魔法を掛けとけば、わからなくても分解されるだろう。
それで対処できるなら簡単だ。とりあえず今はこの世界の最高級……ではないだろうが、こんな俺達に出すような料理だし――でも高級な料理に舌鼓を打ちつつ、ペニーニャイアンに揺さぶるをかける。
「ペニーニャイアン様は食事をとらないのですか?」
さっきから見てた事をなんとなく……を装って言ってみる。まあけど、これで動揺するなような、たまではない。
「ふふ、皆様に満足いただくのが主催役目。そんな私が手をつける訳にはいきません」
なんとまあ、最もな理由をつけて俺達と一緒に食事をするのを拒否する。それなら目の前に料理なくても良くない? あれか? 一応料理を前に置いてるのは、一緒に食事してる感を出しておくためだろうか?
やっぱりこっち的にも自分たちだけがバクバクと食べてると、遠慮って奴が出るから……
(出ないかな?)
……なにせ賞金稼ぎの奴らはデリカシーって奴を持ち合わせてないからな。気にせずに食事してたかも……でもまあペニーニャイアンもこっちに気をつかった……
(いや、矜持の問題かも)
こっちに気を使ったんじゃなく、彼女の上に立つものとしてのプライド的なもので、ちゃんと満足はさせたいのかもしれない。なにせ俺達の様な下位の連中に「あそこの料理とか持て成し、いまいちだったな〰」とか思われたら、多分ペニーニャイアンの腸が煮えくり返ると思う。
そういうプライド持ってるやつじゃん。俺達は敵だけど、そんな俺達にバカにされるのは許せないっていうね。なんとなく、まだちょっとしかペニーニャイアンと接してないが、そういうのはわかる。
上にいる奴はそういうプライドとか外面とか気にするからな。
「皆様のお役目はローワイヤを送り届けることでしょう? すでに目的は達成してます。私もあなた達が無事にローワイヤを送り届けてくれたことに、とても満足してます。改めてお礼を言わせてください」
そう言って微笑むペニーニャイアン。そんな笑顔に頬を赤くする荒くれ者共。ちょろい奴らである。まあけどわからなくもない。なにせペニーニャイアンは普段彼らが接してる女性とはあまりにも違う。それはローワイヤさんだってそのはずだったんだけど……きっと雰囲気の違いだろう。ローワイヤさんは普段はただのワガママな姫だからな。
なるべくなら近づきたくないってすぐに彼らは思ったようだ。でも今の所
ペニーニャイアンはいい顔しか見せてないし、彼らの様な荒くれ者達にも丁寧に対応してる。
普段サバサバしてる処世たちしか知らない彼らにとって、ペニーニャイアンの仕草や所作、そして雰囲気が全て新鮮で、それがきっと琴線にふれるんだろう。
「あなた達の仕事ぶりには高い評価をしないといけないですね。是非、アズバインバカラへお手紙を書かせてください」
ん? なんか今の、遠回しだけどさっさと帰れ……的な事か? 殺ることやってこっちも高評価を与えてやるから、さっさと巣に帰れって言われてる様に聞こえたような……
偉い奴らってのは直接的にいうよりもこんな風に遠回しに言うんだよな……とりあえず俺はローワイヤさんへと視線を送ってみる。するとなんか泣きそうな顔でこっちもみてた。
多分これは俺の考えがあってるってことだと思う。帰ってほしくないって顔に書いてあるし……まあ一度帰ったと思わせて門を乗り越えるって選択肢もないこともない。けどそれだと、一時的にでも、ローワイヤさんと距離ができる。それは困る。だからまだ、彼女から離れる事は出来ない。
俺は安心させる様にちょっと微笑んで見せた。