「その剣が、無限回廊を壊したというの? そんな見すぼらしい剣が!!」
ペニーニャイアンはそう言ってこっちを睨む。うーん、聖剣は決してみすぼらしくない筈だが、でも世界が違うと価値観とか美意識だって違う。だからまあ聖剣を見すぼらしいと思うかもしれない。けどここまでこの世界で生活してて、そこまでま価値観が違うとか感じた事はないけど……
「見すぼらしいですか? これは私の世界に伝わる聖剣ですけど?」
「聖剣……それに私の世界……」
ペニーニャイアンが何やらブツブツと言ってる。俺が異世界人というのは把握してないのか? いや、アズバインバカラでは普通に……いや、あの感じは信じてはいないのかも? なにせ皆さんフレンドリーだし。普通勇者とか聖女とかそういう特別な存在ってもっと崇められる筈だと思う。
この世界に勇者という概念がないから、勇者を名乗っても意味ないのはわかるが、一応たしか天の使い的なそんな事で受け入れられた筈なんだが……アズバインバカラの人達はそこら変なんか気にしてない。
(でもそうか、崇める対象はジゼロワン殿に行ってるのかも?)
でもラパンさんとかには一応ジゼロワン殿を操ってるのは俺たちになってるが……まあジゼロワン殿は勝手に動いてるから、そろそろその言い訳も危ないと思ってるが……街の人達は時々ジゼロワン殿を拝んでる姿は見たりしてた。まああれだけデカイとそれだけで特別なものに見えるのと言うのはあるだろう。
その理論でいうと、聖剣はそこらの剣とは美しさが段違いだとおもうが……ペニーニャイアンは認めてくれない。
「ふふ、何を言ってるのかわがりませんが、私はもう怒りましたよ」
「わーわー、ペーニャ動いちゃ駄目だよ。それにローワイヤちゃんも謝ろう! 謝って素直に死んでくれないと、大変な事に成っちゃうよ!!」
なんとか執事に支えられて立ち上がるペニーニャイアンの周りでピローネがそんな事を喚いてる。大変な事か……既に成ってる気もするけど……それに俺はもう自分がこの剣でペニーニャイアンを貫いたと言ってしまった。つまり、俺はその罪状を認めたわけで、ここで引いても殺されるだけだろう。なら剣を収めるなんてできない。
「ピローネ、私はここで死ぬ気はありません。だから謝らない。ペニーニャイアン様……いえ、ペニーニャイアン。私は貴女のお人形じゃない!」
はっきりとそういい切るローワイヤさん。それに二人は……いや、あっち側の人達は衝撃を受けてる。ペニーニャイアンはわなわなと震えながら何かを胸の谷間から取り出した。確かにめっちゃデカイペニーニャイアンならそこに物を隠しておく事も出来るだろうが、わざわざわなぜにそこから? 釘付けにして油断を誘うとかか? 取り出した物はなにか小さな塊。ハッキリ言えば、石のように見える。だが多分石ではないだろう。なにかを固めたものか?
それをペニーニャイアンは口に含む。
「まさかここで貴重なこれを使う事になるとは思いませんでした……」
口に含んでそれをガリッと砕く音が響く。すると、何やら青いオーラの様なものがペニーニャイアンを包み込む。そして目を閉じ集中するペニーニャイアン。その光が肩の傷に集まっていくと、ギズがなおってく。
(治癒魔法みたいなものか?)
そんな予想をしてる間にペニーニャイアンの傷は完治した。そしてこっちに酷薄な笑みを向けきた。
「残念でしたね。此の罪、万死に値しますよ」