鋏が猛威を振るってる。俺の結界さえも貫通して、その攻撃が周りに届いてる。それをみてペニーニャイアンは笑ってる。そして――
「それを防ぐすべはありません」
――とご丁寧に言ってくる。それだけ絶対の自信がこの鋏にはあるってことだろう。それはそれは大層なものを引っ張り出してくれてありがたい。そこまでいうのなら、本当に切り札なんだろう。
(でも、あの鋏の攻撃……無差別の様に思えるんだが? 別に鋏自身が移動して斬りつけてる訳ではないし、状況的に鋏が発する音を聞いたら傷ができるって感じだ。その音を聞かないようにする何かをしてるのか?)
頭に直接響く音を阻む方法……それは俺的にはわからない。パッとペニーニャイアンを観察したが、別段力が鋏以外に発動してる気配はない。
(そういえば後ろのピローネも無事だな)
最悪、ペニーニャイアンは所持者って事で、鋏の攻撃の対象外になってる……ということもあると思ってる。でもそれならピローネはどうだ? ピローネは完全に俺たちと一緒の立場だと思うんだが?
でもどうやらピローネにも攻撃はいってない。ただ平然とこっちをみてる。いや、なんかうつろな表情に見えるような……あいつは子供らしく無邪気な性格だったのに、今はなんだがただこっちを見てる感じで、別に何の反応も示してない。俺たちが阿鼻叫喚してるなら、ピローネの様な無邪気な正確なら、笑ったり楽しんだりしそうなものだが、そんな反応は一切ない。これって……
「一体どうなってるんだよ!?」
「いてえ……どんどん傷が深くなっていやがる」
「皆さん、治療をするので大人しく――きゃああああ!?」
こっち側はこんな感じで、次々と傷が増えていく人が続出してる。いくらこの世界の人達が頑丈だと言っても、限界はある。なにせ死は普通にある世界だ。このままだとヤバイ。
「勇者様……」
「ああ、ごめん直ぐになお――」
ここで俺はあれ?っと思った。ローワイヤさんはあれから一回も痛がってない。もしかして……
「ローワイヤさんはあれから他に傷が出来てませんか?」
「そういえば……私はこれだけです。高貴ですから……かね?」
なんかちょっと強がってそんな事をいうローワイヤさん。でもこれって……そんな時、ピュアも引っ付いてきた。
「これ以上は限界です勇者様。こんな私ですけど、お許しください」
「ちょっと、まずは私からよ」
「勇者様は差別はしません。傷ついてるのなら、きっきと平等に治してくれます」
なんか二人が言い合いを始めてる。案外元気だね君たち。てかピュアの方は結構傷あるぞ。
「はあ、勇者様のお傍にいると安心します」
「安心……」
ピュアが何となくいったであろうその言葉に俺は引っかかった。