「殺したのですか?」
「いや、どっちもまだ生きてると思うよ」
俺は訪ねてきたローワイヤさんにそういった。壁に大きな穴が開き、その傍で倒れてる二人。酷いのはピローネの方だが、ペニーニャイアンもそれなりのダメージを負ったはずだ。なぜなら、そうなるように俺がしたし……ペニーニャイアンが他人を使いつぶしていいと思ってるのは自分が特別だと思ってるからにほかならない。
そしてどこかで自分は特別だから何かで守られる……とか思ってたんじゃないだろうか? あいつはそんな奴だと思う。実際、俺はペニーニャイアンは捕えるつもりでいたから殺すまでの攻撃を加えるつもりはなかったしな。
一応最初にぶっ刺したけど、それだって肩付近だ。重要な臓器がある場所じゃない。殺す気なら、最初から首をはねてるしな。そうすれば、そもそもが魔法を使えようが関係はない。
ペニーニャイアンは俺と、ピローネの戦いを見て、次第に本当はあの時、自分は殺されてたのでは? とか思ったはずだ。でも殺さなかった。その理由だってあいつならたどり着くだろう。執拗に俺は降参するように言ってたしな。
だからこそ、高をくくってた。でも別に死にかけてたって、力を使えば元に戻せないわけじゃない。そしてペニーニャイアンには責任があると思った。
それはピローネだけへ……ってわけじゃない。これまでのすべてとこれらかのことに対してだ。世界をないがしろにしてきたことへのちょっとした報復だと思ってくれればいい。
多分ペニーニャイアンだけじゃなく中央の上の方は力もその手段もあるのに、何もやってこなかった。その責任。だからちょっとばかし生死の境でもさまよってもらおうかとな……
「今の内に殺した方がいいんじゃないか?」
「ああ、せめてそっちの小さいほうだけでも……」
そういうのは賞金稼ぎの面々だ。まあわかる。確かにピローネは危険だ。すでに人の形になってないし。化け物……そう呼ばれる類の姿になってしまってる。ピローネのことを考えたら、一思いに……とか思うが、でもピローネはやっぱりまだ子供で……そしてそうしてしまった責任はすべてこのペニーニャイアンにあるわけだ。
ある意味で、こいつを裁くのはこのピローネかなと思ったから、一応まだ生かしてはいる。今はペニーニャイアンを殺されるのは困るが……ある意味でも都合よく育てて使ってきたピローネに最後の決定権があったら……それは皮肉がきいてそうだし……
「ん? やっぱりか!」
俺は話しつつ、もう一回軽く聖剣を振るった。するとペニーニャイアンへと向かってたわずかなピローネの触手を切り裂く。今のは……明らかにペニーニャイアンを食べてその力を僅かでも回復させようとしてたんだと思う。
やっぱり別に何か契約的な縛りがあの二人の間にあるわけではないようだ。
(すまないなピローネ。まだそいつを殺させるわけにはいかない。それに今はお前自身じゃないだろうし)
ただの砂獣として食らうのと、ピローネとしてちゃんとその意思を持って裁きを下すのとでは違うだろう。実際ピローネが戻ってこれるかはわからないが……一応努力をしてみるつもりだ。