ドゴオオオオン!! という大きな音ともに、この建物の一部が崩れた。多分下の建物と接触したんだろう。そしてそれとともに、たくさんの悲鳴と、激しい振動と数えきれないほどの瓦礫の山が俺たちにも襲い掛かってくる。
(このまま中にいたら面倒だな)
俺はそう思って全員をひとまとめにして浮かした。皆が「え?」「きゃあ!?」とか言って驚いてる。
「落ち着いてください。今からここから脱出します」
俺はそう言って結界を自身を中心に展開する。出力は聖剣に任せとけばいいだろう。今、聖剣は俺に並走するように飛んでる。流石に見えないほど遠くに飛ばすことは出来ないが、視界が捕える範囲なら、思うがままに操れる状態だ。
結界があれば瓦礫におびえる必要はない。俺は皆を浮かした状態で、建物にぶつかったほうとは反対側に走ってそのまま壁をぶち破る。夜空がみえ……と思ったが、上に伸びてる中央の都市構造のせいで、そんなの見えない。とことん下に優しくない都市だ。
下の奴らには空さえも拝ませてくれないっていうね。まあけどそんなことを思ってる場合じゃない。このままじゃ大変な被害が出る。俺は素早く皆を安全な広場みたいなちょっと開けた場所において、建物を巻き込んで落ちていくペニーニャイアンの屋敷へと再び向かった。
「取りあえずこれ以上の被害を出さない」
すでに大怪我を負った人とかいるかもしれない。建物がつぶれてるし、その下に埋もれてる人もいるだろう。けどまずはこれ以上被害を広げないために、俺は更に下に落ちていくペニーニャイアンの屋敷を腕の前方に展開した魔法陣から光線を出して消滅させた。聖剣は使わないのかって? あれは念のために結界維持のために置いてきた。
ペニーニャイアンとかをまだねらってる奴はいるだろうしな。それに崩壊してる建物なら、簡単に壊すくらいできる。なるべく瓦礫が出ないように消滅させれたはずだ。細かいのもおちてるが、それらは拳圧で手っ取り早く遠くに吹き飛ばすことにした。
「よし」
大体これで下に被害はいかないだろう。俺は、一番被害大きい建物へといく。そこは行きなり上からでかい建物が落ちてきたせいで、かなりの惨状となってる。
「即死じゃなければどうにかできるはずだ」
この世界の人間は強靭だ。少なくとも、俺の元の世界の人々よりはその体のつくりが頑丈なのはわかってる。だからどうにかなると思って先に建物を処理したわけで……
「大丈夫ですか?」
取りあえず俺は動くことにする。軽い怪我なら、心配する必要はない。俺が見るのはあくまでも生死をさまようような状態の奴だ。何人か治療をして時々瓦礫にとなった建物を掘り起こして内部にいって声をかける。すると奥の方から声が聞こえ。うめき声の様な声。
もしかしたら俺でないと聞こえないほどのか細い声だったかもしれない。でも確かに聞こえた。俺は無理やり道を切り開いて、進んでいく。普通なら一人でどうにかなることじゃないだろうが俺には関係ない。そしてしばらく進んでると、瓦礫から腕だけが出てた。
小さな腕だ。子供の腕。血にまみれてだらんとしてる。
(遅かったか?)
そう思うも、一応声をかける。すると……
「助け……て」
そんな声が返ってきた。俺はホッと胸をなでおろし「任せろ」と宣言した。