「お話をしたいところですが……」
そういってこの世界の王である『ゼラバラバファ・バン・グルダランファ13世』は天井を見上げてそういう。そこは天井の筈だが……彼が何を懸念してるのかはわかる。それは宵だ。この世界の人たちは宵には眠りにつく。
それは強制的なこの世界の摂理だ。だから抗う術は……一応あるみたいだが、ただでできるわけではなさそうだし、それはたぶん、教会側しか持ってない。だから宵にもうすぐ入りそうな時間帯を
王様は懸念してるみたい。
まあ実際、こっちも今夜はいろいろとあったからな。
「宵ですか?」
「ええ、恥ずかしいですが、私たちは宵を克服できてません。奴等とは違って」
「そんな風に言って大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。今、この場には信頼できる者たちしかいませんので」
そういってニカッと笑顔を作るゼラバラバファさん。なかなかに気持ちいい人のようだ。しかもここまでぶっちゃけてるし……まあ本当かなんてまだわからないが……でも実際、教会が自分たち以外であれを使ってるとは思えないからな。だって宵に動ける……なんてめっちゃアドバンテージ高い。
「今から部屋に案内いたします。快適な事を約束いたしますので、それてどうかご勘弁を」
「疲れたんで、それはいいですけど……それは自分だけじゃないですよね?」
「もちろんです」
もしかしたら俺だけが特別待遇で、一緒にきた皆は別……とかなったら、「おや?」と思う所だった。いうなれば、やっぱり権力者って皆同じなのか? ってね。でもそうではないみたいだ。
「ですが……その化け物は看過できないのですが?」
「ああ、ピローネですね」
ピローネを警戒するのは仕方ない。ペニーニャイアンもこの人たちにとっては敵側だと思うが、魔法さえどうにかできれば、ペニーニャイアンはただの女性だ。けど、ピローネは違う。ピローネは既に人を逸脱してるからな。
「ピローネの事は自分が責任をもって管理しときます。とりあえずは」
俺は床に転がしてるピローネに向けて、手をかざしした。すると光の鎖が現れて、ピローネを雁字搦めにした。別に見えなくすることもできるが……このほうがきっと安心するだろうって配慮だ。
「おお、これは……」
「封印を施したので、これで勝手に目覚めるということはないでしょう」
「流石は勇者様……その御業、しかとこの目に焼き付けました」
そういって皆さんが「おおー」と拝んでくる。やめて……そんな大したことはしてない。でもとりあえず、ちゃんと見えるようにしたのはよかったらしい。
「ペニーニャイアンはどうしますか?」
「勇者様の良しなに」
「いいんですか? あなた達が幽閉したいとか……」
「それで朝になったら逃げられてたら、私たちのことを信じてくださらないでしょう」
まあ確かに。まだこの場にいる人たちを全員信じたわけじゃないし。それに教会は宵に動く手段をもってる。一番無防備になるのは宵だ。誰もが眠るんだからな。だからその間に救出か……それか、ペニーニャイアン自体が宵に動けないとはかぎらない。そうなると……やっぱり同じように宵に縛られない俺のそばに置いとくのがいい。見透かされてるな。
「ならペニーニャイアンも同じ部屋にお願いします」
「はいはい! なら私も――」
「ローワイヤさんは駄目です」
「むむー」
頬を膨らませてもだめだからね。普通は男女が同じ部屋なんて駄目にきまってる。ピローネやペニーニャイアンはやむなくだ。とりあえず俺たちはそれぞれの部屋へと案内されて、宵を迎えた。