俺は王様達の前から姿を消し、長い王宮の廊下を駆けている。でも誰も俺には気づかないだろう。なにせ早すぎて見えないからだ。とりあえずさっさと外に出るか。俺は窓から外にでて、王宮の屋根の上に登った。そしてそこから見下ろす。案外王宮は結構スカスカ……といえば言い方悪いが、多分この世界暑いから風通しを重視してるんだろう。
まあだからって一箇所から見るだけじゃ、大抵は死角になるが。でも大丈夫だ。
「全てを見通す視界をここに」
その言葉とともに、眼球に魔法がかかる。陣が浮かび、さらに眼球の前に三重の陣が浮かんだ。それで見れば、建物は透けて、そして思い浮かべる対象が勝手に浮かび上がる。
「あそこか」
ペニーニャイアンは上手く人気のない場所を歩いてる。その周囲には鎧をきた騎士のような全身鎧のやつが四人。あれが協会の協力者なんだろう。騎士の格好はこの王宮の騎士の鎧と同じだ。でも中身がきっと協会の奴らだ。まあもしかしたら賄賂で協力してるやつなのかもしれない。
でもそれでも対応は変わらないだろう。なにせ王宮に反旗を翻してるわけだからな。それに協会側も下手に部下を使うよりも金を握らせた使いっ走りに任せた方が逃げ口上的にはいいのかもしれない。
「まあけど、使いっ走りをそこまで信用してるわけないよな」
ペニー二ャイアン達の向かう先には協会の変な格好した奴らがいる。王宮の外側だ。しかもルートは人通りが少ないところを進んでるが、なんと目的地はどうやら正門だ。
外にさえ出て仕舞えば的な? いや、ペニー二ャイアンが王宮にいると外の奴らに完全に認識させてしまえば、それで文句を言えるんだろう。そう考えた。
(なら、正門に近づく前に止めないと……な)
俺はそう思って屋根から飛び降りる。一足で空を駆け、でも絶妙な力加減で今まさに、たまたま通りがかっただけ……みたいな装いでペニー二ャイアン達の前にでる。
「なっ!?」
そんな感じでペニー二ャイアンたち一向が驚いてる。でも俺は本当にたまたまかのようにこういった。
「これはこれはどうしたんですか皆さん? それにそこにいるのは軟禁中の筈のペニーニャイアンの筈ですよね?」
俺がそういうとすでに騎士達は剣を抜いて斬りかかってきてた。一番近いやつが鋭く剣を突き刺してくる。なかなかの鋭さだ。だが俺にとっては止まってるのと代わりはない。
まあけど力の違いを見せつけるためにも、俺はその剣の刃を根本から折ってやった。でも相手はそれに気づいてない。俺に向かって刀身がない剣を向けている。そしてそれに気づいたのは、俺がわざとらしく折った刀身を地面に落としてその音がカツーンと響いてからだった。
「なに? どういう……」
力の差を見せつけようと思ったが、どうやら理解できてないみたいだ。しまったな……ここは指一本で突きを止めた方がインパクトが大きかったかもしれない。
(まあまだ三人いるし、上手くやってみせる)
俺はそう思って、変なこだわりに意識を向けていた。