「ピローネ、貴方の力でこの方々を守りなさい。必要な駒ですからね」
「わかった!!」
とりあえず俺の次の戦力として俺たちはピローネを使うことにした。ピローネは厳密には敵だが、こいつは単純だ。ペニーニャイアンの言葉しか聞かないが、俺が魔法で偽装してペニーニャイアンとして命令を下せば、ちゃんと動いてくれそうだから利用する。
なにせピローネは純粋だからな。もちろんその力を全開放はさせない。縛りは付けとく。てか、ピローネの体は力の効率が悪すぎるし、力自体が減っていくと、その理性までも薄れていく。だから出力を絞らせることは大切だ。
それが自力でできればいいんだが……流石に昨日の今日で体が変化してしまったピローネにそれを求めるのは酷だろう。なので俺が術的にそこら辺をコントロールする。
それははつまりピローネの力が弱まるが、まあある意味それは安心につながるだろう。更にいえば流石に今のピローネの力を最大限に使うほどの刺客なんてそうそう出してこない……筈だと信じたい。
「本当に大丈夫ですか? ピローネが暴れたら私もやばいんですけど……」
「なら一生懸命抑えてください。きっとペニーニャイアンの他にはローワイヤさんくらいしかピローネへと言葉を通すことはできないと思いますから」
「ええーー」
ローワイヤさんは嫌だなって顔してるが、やってもらわないとだめだ。なにせペニーニャイアンはピローネの近くに置くわけにはいかないからだ。なにせ王宮でもピローネに敵うやつはいない。なんか大将軍とかいう地位の人はかなり強いらしいが、今は別の町に遠征に行ってるとか。最近の奇妙な砂獣の目撃報告と、一つの町がその謎の砂獣によって落とされたから、その対策とか。なんとも間の悪いことだ。
でもいない戦力を当てになんてできない。だから使えるものは使うしかない。それにいくら強くても、流石に今のピローネとか、協会が隠し持ってる隠し玉に対抗できるとはどうしても思えないからな。そう考えると一緒だ。
「とりあえずこれから自分は協会へと向かいます。ペニーニャイアンの部屋には誰にも侵入できないように結界を掛けてますから、触れないでくださいね。どうなっても知りませんよ?」
俺はそういって周囲を脅しておいた。どこに協会に通じてる奴がいるかわからないからな。ここまで言っても、ペニーニャイアンが軟禁されてる部屋に侵入を試みようとするやつに慈悲はない。そういう事だ。
「旦那、気をつけろよ。協会の奴等、何を隠してるかわかったものじゃない」
「わかってるさ」
賞金稼ぎ一人のそんな言葉に俺は頷くよ。
「勇者様、どうか……どうかわが子をお願いします」
「任されました」
王妃様の祈りに俺はそういって窓から飛び出した。