(あそこじゃ困るな……)
俺はそう思って指先を止まってしまいそうな腕輪へと向ける。完全に静止した腕輪が再び動き出す――なんてなったらホラーだが、まだなんとかぐワングワンしてる腕輪なら、何かのひょうしに動き出したっておかしくない――よな? それに子供ならそこらへ辺に疑問を持たないかもしれないし。そう思っての魔法の使用だ。
「あれ?」
こっちに向かって幼い王子様が一瞬キョトンとしたが、それも本当に一瞬の事だった。彼はこっちに転がってくる腕輪を追いかけてきた。腕輪を魔法で転がして、自然とそれを追いかけさせることで部屋の外へとだす。
そして部屋の外ですぐに魔法を解除して幼い王子様の手に戻してあげようとした。けどなんか幼い王子様はころがってもうすぐ止まりそうな腕輪は一瞥しただけで、その先をみつめてた。
純粋な子供の目がまるで俺を見透かしてるかのような……そんな感覚に襲われる。
(いや、そんなはずはない。俺が見えるはずは……)
「そこにいるんですか?」
ビクッと思わず体が震えた。だって弱い三歳程度の幼児と呼べる子供にしてはしっかりとしたその口調、それに既にちゃんとした知性があるような瞳に驚いたからだ。
三歳児とはこれほどに利発だっただろうか? あまり子供の相手をしてこなかったからいまいちよくわからない。でも流石に……ここまでではなかった気がするが?
「誰もいなんですか? 姿を隠してるだけなら、大声をあげて人を呼びますよ」
なんということだろうか? 見えない相手に対して脅してきたぞこの三歳児。絶対に三歳児じゃないだろ。言動がしっしかりしすぎてる。三歳児と言ったらまだまだ思考プロセスとかが確立してなくて、単語を一音ずつ発するとかじゃないか? めっちゃこの子ぺらぺら喋るぞ。まあ三歳児だから、わずかに舌ったらずなところがあるけど、それでも……だ。
実際この子が大声出して人を集めてもこの子が勘違いしたとか、見間違いとかで済ませれる自信はある。けどこれだけ利発的な子ならここは素直に姿をみせるべきだと思った。
「すみません王子様。貴方に危害を加えるつもりはありません」
突如現れた俺にも幼い王子様は驚いたりしなかった。本当にこの子は三歳児ですか? さっきからそう思うことが多すぎる。
「私の事を王子としってるんですね。とすると、父や母の差し金ですか?」
「まあ、そうですね」
そういって腕を組んで考えこむ。その姿はあまりにも大人びてて三歳児には……いや、おもむろに親指をチュバヂュパしだした。やっぱりこの子はまだ三歳児の様だ。うん、なんか安心した。