uenoutaの日記

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転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 301

「いや……しかし……」
 
 アヴァーチェはそれでもやっぱりなかなかに今、目の前にいるのが自分の弟だとは一概には信じられないようだ。まあ状況が状況だしな。実際、あんまりゆっくりと二人の記憶をすり合わせてる暇はない。
 
 一応外にはわからないように、視界を遮るくらいには砂を荒々しくみせてるが、この教室の外にはほとんど聞こえないように……という配慮はしてる。他の子供たちは泣きわめきそうだったからアヴァーチェと分断した後に魔法で眠らせた。
 だから誰かがこの部屋の扉を開けない限りばれないとは思うが、悠長にしてる暇はない。
 
「兄上、信じてください。今我々は瀬戸際に立ってるのです」
 
 どうやらプライムは完全に信じてなくても話すことにしたようだ。大丈夫なのか? と思うが、現状を伝えることでアヴァーチェの考えを刺激するつもりなのかもしれない。
 
「瀬戸際? 何かあったのか? 誰かにひどい事を言われたか? 兄としてキチンと話してやるぞ」
 
 アヴァーチェが確かにお兄ちゃん的な事を言い出した。ほほえましいことだが、そういう事ではない。
 
「違います。兄上は外の事をどの程度しってますか?」
「外の……協会の外の事か?」
「はい」
「お前は何を知ってる?」
 
 まさか質問を質問で返してきた。それに……だ。明らかに外の事を話題に出したらアヴァーチェの雰囲気が変わった気がする。さっきまではなんかちょっと疑いが薄れつつあったようにおもうが、今は再び最大限に警戒してる――という感じだ。
 まずくないかプライム? ここは「冗談でした~」とかいった方が……
 
「兄上、私たちの立場はとても危ういと自分は思ってます」
「どういうことだ? 協会は私たちによくしてくれてるぞ」
 
 どうやらアヴァーチェは今の境遇に別に不満はないらしい。どういう生活を送ってるかはわからないが、案外充実してるのか? さっさと親元から引き離されたと聞いてるが……
 
「私たちは人質のようなものです。そうでしょう兄上」
「それは違う。我等は上に立つために、沢山の事を学ばなくてはならない。親元では甘えがでるだろう。それはどちらもだ。だからこそ、協会は我々の教育を担ってるのだ」
 
 そういう設定なのか。まあもっともらしいといえばもっともらしい。確かに自分の子供には親は甘くなるものかもしれない。とても立派な王様から、馬鹿な王子が育つ……そういうのは往々にしてあるものだ。でも疑い一つ持ってないとは……しっかりと協会は教育を施しているようだ。
 
「それは建前にすぎません。兄上も協会と王族……どちらの立場が強いかわかってるのではないですか? 協会の言葉には耳を傾ける者たちがたくさんいても、王家の言葉には耳を傾けない。
 そんな状態になってると……」
「それはこれまでの王たちのふがいなさだ。だが、それでも協会は今まで王家を支えてくれてる」
「協会がそうしたとしたらどうですか?」
「ありえん! やはり貴様……質の悪い砂獣か何かだな? 砂獣の中には知性があるやつもいるらしい。そうでなくては、我が弟がそんな事を言うわけはない!!」
 
 むむ……やはりこうなったかという感じになってるぞ。ここから巻き返し図れるか? 無理のような気がするが……やはり幼い時からずっと教育されてきた賜物が出てる。常識がきっと教会のそれに染まってんだろう。
 
 協会は正義であって、世界の為にその身を焦がし頑張ってる――と。そう教え込まれた常識を言葉だけで崩すのはとても難しい。ここはさっさと眠らせて連れだしたほうがいいかもしれない。
 そう思うが……プライムはまだあきらめてないようだ。