「まあいいでしょう」
カザムジャナちゃんがそういって変な時間は終わった。どうやら最後ので満足してくれたらしい。よくやったプライム。これで王様と王妃様に頼まれていたことはミッションコンプリートだろう。
(いや、まだだな。油断するのは早い)
なにせまだここは協会だ。しかも協会の中枢で本拠地だ。いくら俺がこの世界の者達よりも強いといっても、油断は禁物だろう。なにせプライムもカザムジャナちゃんも、そしてアヴァーチェも子供で何の力もないんだ。
いや、一応アヴァーチェは魔法が使えるが、それを当てにする――なんて事はできないだろう。
「よし、それではさっそくここから脱出しましょう」
「他の皆さんは大丈夫なのでしょうか? 永遠に迷い続けるとかなると哀れなんですが?」
カザムジャナちゃんが自分以外にこの場所で迷ってる子たちを心配してる。けどそれは問題ない。まあまだちょっと俺達の為にも迷ってもらうつもりだけどね。
なにせすぐにカザムジャナちゃんがいないとばれるのは困る。プライムにアヴァーチェの次にカザムジャナちゃんまでもいなくなったとわかったら、どう考えても王様達の関係が疑われるだろう。
そうなると中央脱出に支障が出る。なるべく明日まではバレないのが望ましい。ばれてたとしても、それどころじゃない――みたいな感じにしとく必要があるから、仕掛けは必要だろう。幸いにもこの建物の構造を把握するために、俺は最初に小さな光をばらまいていた。そしてそれは今もこの協会の中枢の奥へと入り込んでる。気づかれないように消す事だってできる――が。
(最後には光達に仕事をしてもらおう)
俺はそう思ってた。とりあえず俺たちが脱出するルートとは反対の方でまずは一つの光を爆発させる。原因不明の爆発――それでこの協会内部の人々はその爆発に気を取られるし、どうあっても人の波はそっちに向かう。
「さあ今のうちに!」
俺は三人を先導して外を目指す。外と言っても、最初に降り立った中庭だけど。あそこから空に出れば簡単だ。門じゃないから検問してる奴らだっていないからな。
最初に倒した協会の奴らがどうなったかだけど、なんとまだ見つかってないし、あそこは協会の浅い部分だからだろう、まだ静寂してる。奥側が慌ただしくなってるからな。とても都合がいいことだ。
俺たちは危なげなく中庭までつくことが出来た。
「失礼します」
俺はそういってプライムとカザムジャナちゃんの腰に手を回して抱えた。
「ちょっ!? 失礼ではなくて?」
「すみません、けどこうしないと危ないですよ?」
二人はまだ小さいからな。激しく動くと二人の力では振り落とされる危険がある。だから俺が抱えた。アヴァーチェだけは首に手を回して自分の腕の力で頑張ってもらう。一応魔法的アドバイスで身体強化的な事ができないかと思ってやってもらってるから大丈夫だろう。
「姉上、これは仕方ない事です。我慢してください」
「プライムがそういうなら。許しましょう」
と言う訳で、許可も出たし俺は両手にプライムとカザムジャナちゃんを抱えて、首からアヴァーチェを下げて協会の中庭から一気に空へと飛び出した。