さてさて、私が暇な中G-01への理解を深めてると、ようやく新たな機器が起動したという信号を受信した。それは思った通りにやっぱり勇者が中央で起動した機器だったみたいだ。すぐに通信が入る。
『聞こえてますかジゼロワン殿?』
「聞こえてますよ。遅かったですね」
私の予想ではアズバインバカラから中央へとたどり着く日程を考慮しても、一日くらいはもっと早くこの通信が入っててもおかしくないと思ってたんだけど……
とりあえずは勇者の手前、それなりに威厳を見せる対応をするように心がける。勇者にはやけに尊敬されてるからこっちも大変だ。
『すみません。ですがこちらは大丈夫です。なかなかに協会の派手な歓迎を受けたくらいですよ」
「まあ勇者が大丈夫だというなら大丈夫なんでしょう。心配はしてませんよ」
そわそわしてたくらいだからね。別に全然心配なんてしてない。本当だもん。そもそもがこの世界の住民たちは十分私達よりも弱いってことはわかってるし。
「エネルギーは大丈夫ですか? 魔王じゃあるまいし、勇者にそこら辺の心配はあまりしてませんけど」
『それならば問題はありません。協会の刺客の力を取り込み今は自身で変換可能となりました』
「そうなのですか?」
『はい、これで自立稼働時間が大幅に伸びました。それにジゼロワン殿のお手を煩わせる事も減らせます』
「それは……お見事です」
まさかそんなことになってるとは驚きである。魔王も勇者もこの世界ではエネルギーを補給する術が私から直接的な供与をするしかなかったんだけど……どうやら勇者はそれが自身でできるようになったらしい。それはとても大きなことだ。なにせ私からの供与しかできないと、そのエネルギーは有限になっちゃうからね。
私からの供与が出来ないから、必然的に中央に行ってる間は節約する意識をもって力を使うしかないと思ってた。それが最大の不安要素だった訳だよね。
なにせ全力出せれば、間違いなくこの世界の奴らなんて勇者も蹴散らせるほどの力を持ってる。けど節約してエネルギーの残量に気を配りながらだとどこかで足元をすくわれるかもしれない――そんな懸念があった。
でもそっか……自身でこの世界の力を自身のエネルギーに変換できるようになったんだ。やっぱりG-01が成長するように、存在を作り替えられた勇者や魔王もまだまだ成長するみたいだ。
普通の生物とかではなくなってると思うけど……完成されたものになってなくてよかった。
(でもこれは魔王が黙ってないね)
なにせ勇者と魔王は張り合ってる。いや正確には魔王が一方的に張り合ってるんだけど、これは勇者にとって大きなアドバンテージだからね。魔王が焦るのは目に見えてるよ。
『それでですが、中央におられた王族の方々がここを脱出して、アズバインバカラへと向かう事になりました。早馬が走ってますが、それよりもこちらの方が早いと思って伝えておきます』
「そうですか。まあエネルギーを補給できるようになったあなたがいれば問題ないでしょう。ラパンさんにはこちらから伝えておきます」
『よろしくお願いいたします』
そういって通信は切れた。王様が来るらしい。なんかアズバインバカラがどんどんとめっちゃ重要な場所になってる気がする。