「ふん、大罪だと? 上等じゃないか!! 我こそは魔王だそ!!」
「……それは罪深い名のようですね」
魔王の胸を張った宣言にもヘメ・レペスと言われてた彼はちょっと反応悪い。この世界の人たちは魔王とか勇者とか、そういうのがいないというか……いや、多分同じ意味の言葉はありそうではある。でも知らない。
だから皆さん魔王も勇者も、そういう名前だと思ってるんだよね。ジャル爺の奴がどうどうと名前みたいにいうから、もうなんか訂正しづらくなったんだよね。けど勇者も魔王も気にしてないみたいだから別にいいかなって。
「貴様も、ヘメ・レペスだっけか? 相当罪深そうではないか」
そう言って魔王は悪そうな笑みを浮かべる。さすが魔王だけあってその笑みは凶悪であった。
「ヘメ・レペスとはそれ自体に罪などありません。むしろ世界のために進んでそうなったのですから。そして私は失敗した。世界がこうなったのも私のせいです。いや、私たちの……ですね」
「話が見えないな。説明してやるのを許してやる」
あくまでも尊大な態度の魔王である。でもまあなんか知りたかった方に行ってるからね。まさかちゃんと魔王はここまで考えてたんだろうか? いきなり命令するよりも、自分の言葉でこういう風に持って行った方が自然だと……
(いや、それはないな)
……魔王は戦闘狂である。別に頭が悪いわけでは無いと思うけど、その思考の大半は強くなること――へと注がれてる。そしてそれを何よりも優先する奴だ。
自身が強くなるのなら、どんなことだってためらいなくする。だって今の状態になったときだっていろいろと勇者は葛藤してたが、魔王はすんなりと受け入れてた。
むしろ『ラッキー」とか思ってたみたいだし。強くなれれば何だっていい――その考えがそこに見て取れるだろう。
「私たちは神の怒りに触れたものたちなのです」
「神の怒り……ふん、神など叩き潰せばいいだろう。気に入らないのなら俺様はそうするぞ」
「神に我らは怒りはないのです。怒りはこの自身――自分自身にしかありません」
「つまりは自分たちの力が足りなかったとそういうことか?」
「端的に言ってしまえばそうですね」
「きっ、貴様、それ以上は――ひっ!?」
ヘメ・レペスと呼ばれてた彼の言葉を協会の他の連中が遮ろうとして、魔王ににらまれて日和った。まさに蛇ににらまれた蛙だ。
「我らは……我らが世界に砂獣という化け物を生み出してしまったのです」
「ほう、興味深い話だ」
確かにそれは魔王に賛成だ。砂獣という化け物はこの世界の仕組み上必要な役目を負わされた存在だと思ってたんだけど、最初はいなかったと? じゃあどうやってこの世界は太陽に到達するようになってたの?
それともこんな殺伐な世界では本当はなかった……とか? うん、興味深い話だ。