「大丈夫ですか?」
「へへ、かたじけないっす旦那」
賞金稼ぎの一人がそんなことを言って強がってる。彼はここに落ちたときに負傷した一人だ。他にも何人もこんな状態になってる。一応自分も回復は出来る。
この世界の力を取込んで返還できるようになった自分は出し惜しみする必要もないんだが……だが、負傷者が多数いるのには理由がある。
「やはり力が拡散するな」
どうやらこの場所では上手く魔法が使えないみたいだ。阻害されてる感じがある。何かそういう装置とかあるのかと一人でこの砂の下の廃墟を探索したが……それらしい物はなかった。いや、一つだけ……まだ行ってない建物がある。
それはこの町の奥にある宮殿だ。流石にあそこには下手に手を出せてない。なにせ異様な力を感じるからだ。他の人たちには具体的には見えてないみたいだが……自分には見えてる。あの宮殿から出る禍々しい気を。
どうやらこの町の名前は『レヴィボーグ』遠い昔に砂へと埋もれた街だと言うことだ。実際既にそれを示すような物が何かあるか……と言われたら何もないが、自分が示したこの位置で、王様はそうではないか……と言っていた。
さすがは王様、今ある街だけでなく、落ちていった街まで把握してるみたいだ。まあけど明らかにあそこだけ異様だからな。他の場所は本当に何で残ってるのかわかんないくらいなのに、あの奥の宮殿だけは堂々と、そして悠々とたってる。
更に周囲には人型の砂獣がいっぱいだ。人型……と言うだけでも、あのジャルバジャルで見た都市核を取込んだ奴を思い出すのに、さらにはなんか全員長い犬なのか馬なのか……よくわからないかぶり物で頭の高さを水増ししてる。それがまた異様だ。そして腕には様々な物騒な武器をもってる。どうやらそれらはあの宮殿に近づかないと何もしてこないみたいで、自分たちがこの街のなんとか入れそうな建物に入ってても襲われることはない。
でも……ここには水も食料もない。だからいつまでもここにいることは出来ない。それにどう考えても、自分たちがここに落ちたのは事故ではないと思ってる。
多分だけど……あの宮殿にいる奴は待ってるんだと思う。俺たちが来るのを……その目的がなんなのかはわからない。だがここから出る為には会わないわけにはきっといかないだろう。
「勇者様」
そう言って、自分たちが一端休憩してる場所で王様が近づいてくる。屋根が半分くらい壊れてる建物だが、人数がそれなりにいる自分たち全員を受け入れられる場所はここしかなかった。そして平民も王様も同じ場所にいる。
本当ならこんな事考えられないのかもだけど、今は非常事態だからな。それに王様は案外気にしてない。自分は周囲を見て回った事を伝える。
そしてそれを聞いた王様はこういった。
「そうですか。私も伝えたいことがあります。どうやらこの地の者に、私……いえ、王家の者が呼ばれてるみたいです」
それって……どういうことだ?