「ちっ」
自分はとりあえず、聖剣から手を放して離脱した。その緑色のぶよぶよとしてた物は、聖剣を取込んでしまう。素手になってしまった。でも自分に焦りはない。
けどどうやら聖剣を手放せたのが向こうはとても嬉しいらしい。その裂けた口の口角を上げてやがる。そして「ぎゃは」なる不気味な笑い声をあげだした。
「何がそんなにおかしい?」
そんな風にいった自分の手にはさっき手放したはずの聖剣の姿があった。それを視認して奴の笑い声が止まる。そして「ぐが?」とか鳴いた。うん?
(言葉しゃべれなくなってないか?)
自分はそれに気づいた。いや、でもそんなことある? もしかして言葉はあの仮面があったからしゃべれてたのか? その仮面を外したら、ぐが――とかぎゃば――しか言えなくなってるぞ。あの仮面は聖剣の光だって弾いてたし、なんかとっても重要なアイテムだったのでは? もしかしたらあの仮面はこいつの発してる言葉にならない声を翻訳して自分に届けてたのかもしれない。
これはあれか? もう言葉を交わすことは不要だという事か?
(奴の腕の色……最初は上の二本だけだったのに今はその下の腕まで変わってきてる)
あの緑色に全体が変わってしまうんだろうか? そうなるといったいどうなるのか……形を保てなるような気がしなくもないけど……そのメリットはなんだろうか? こっちの攻撃を受け付けなくなる? それはちょっとあり得そうな気はする。
そうなると厄介ではあるな。再び奴は武器を次々と出して投げるということをやり出した。しかも変化してる腕で掴んだ武器は同じように変化して、そうじゃない腕で掴んだ武器は硬質なままだから案外やっかい。
変化した腕の方で掴んだ武器はやわくなってるから、聖剣で受けるとまとわりつくんだよね。一瞬聖剣をしまって戻せば綺麗な形で戻ってくるとはいえ、一瞬だけ無防備になってしまう。そのときに硬質な方の剣が刺さったら笑えない。
(まあ多分刺さらないんだが……)
自分の体は人のように見えるが、実際は全く違う。その材質から成り立ちまでだ。はっきり言って既に人ではない……といえる。ジゼロワン殿に連なる材質で出来てるんだ。
ただ人に見えるようにしてるに過ぎない。だから実際は聖剣でたたっ斬らなくても大丈夫だとは思う。
でも自分はそれをアピールしたいわけじゃないからな。いざというときが来るかはわからないが、そのときのためにもなるべく手は取っておきたい。
今はまだ、聖剣だけが自分の唯一の武器と見せておく……そんな事を思ってると、今度は奴の頭のヘビ達がボトボト大量に落ちだし。抜け毛……ならぬ抜け蛇じゃん。全て抜けた頭はうん……やっぱりだけどつるつるになってた。