目の前で変な軌道に変わる聖剣……というか鞭? いや、なんか蛇腹みたいな剣になってるんだよね。それが何か物理法則を無視して迫ってくる。でもそのパターンもG-01は蓄積はしてる。けど……
「聖剣の奴、それに対応してくるんだよね」
どんどんと聖剣はそのギミック感を強めてるよ。なにせ途中で体をパッカーンしたり、蛇腹の間から雷出したり、炎出したたりして、そのバリエーションが幅広い。まあどれもやってみました――的な一芸でしかないけどね。
少なくともG-01にとっては――だけど。G-01にはそんな一芸的な攻撃は通じない。確かにさっきから僅かに装甲は削られて、その度に私的には嫌な感覚が襲ってきて実際結構勘弁してもらいたいくらいの気分ではあるんだけどね。
でもこっちが待ったって言っても聖剣が、いや黒い勇者が聞く耳持つわけないからね。そういう声はコックピット内で叫ぶだけにしてる。でもそれやってると――
『五月蠅いですよ』
――とAIにたしなめられるんだけどね。良いじゃん! 誰もいないコックピット内で叫ぶくらい良いじゃん!! ここは私のプライベート空間なんだよ!! てか誰も来ないから寂しすぎる場所だから、独り言だって多くなるんですぅ!
まあつまりはなかなかに聖剣はギミックが豊富な奴だった……ということだ。白い勇者が使ってるときはそれこそただの剣の形状にしかなってなかったのにね。
きっと聖剣とはかくあるべき――って固定概念が勇者にはあったのかもしれない。だからこそずっと同じ、今まで自分が使い慣れた形から変わることがなかったんだろう。実際考えてみたら、聖剣は勇者と同化してたわけだからね。
顕現させるときに形を変えるくらい出来てもおかしくなかった。だってあの聖剣は毎回空間から取り出してるわけじゃない。勇者の魂? 的な場所から再構成されて出てきてるらしいからね。
空間から取り出してるだけなら、形が変わる――なんて事はおかしいと思うけど、そうじゃなくそもそもがあの剣の形に再構成させてたのなら、別の形だってとれるよね――って事だよ。
でもそれを敵に……上手く使われるってね。厄介! とっても厄介!
「むむ」
腕に絡まってきた蛇腹の聖剣。何? 私を引き寄せようとでも? 流石にサイズ感違いすぎるわよ? 確かに中身は私という女子だけどね! けどそれはきっとわかってないだろう。ならこれは……
「うきゃ!?」
なんかめっちゃ刃の所凶悪な……それこそのこぎりみたいな形になった。それで荒く私の……というG-01の腕を削り出した。
「あははははは!!」
なぜに笑いが出るのかって? それはG-01だって対策をして痛みを和らげてきたからだ。するとほら、なんかこちょこちょされてるみたいな感じになってね……そうなるとほら、わらえるじゃん。
てなわけで私は笑ってる。ちょっとかなりくすぐったいんですけど……一応笑い声は外に漏らしてないから、黒い勇者からは私が苦しんでるように見えてるかもしれない。
いや、実際笑いすぎて苦しいけど……
「やめて……よね!!」
私は蛇腹の聖剣が絡まってる腕を引き寄せた。すると黒い勇者がこっちにやっ――てめっちゃ早い。どうやら私の力を利用したみたい。しかもその腕にはもう一つの聖剣? それが私に火を吹いた。