砂獣が向かってきた。ムカデを改造したような奴と、蛾を改造したような奴と、後はなんか棒? 枯れ木……みたいな残念な奴だ。ああいう虫、居たと思う。だからもしかしたらあの枯れ木みたいな虫はそのまんまなのかもしれないね。
まあそんなの事はどうでも良いんだけど。何せそいつらがこっちに向かってきたからだ。
「ふん、鬼じゃないのならどうにかなるでしょ。結局の所は砂獣だしね!」
私はそう言って拳を握ってファイティングポーズを取る。武器はこの小手だ! これがあれば砂獣になんか負ける気は無い。三体居る砂獣を気にしつつ、私は更に鬼達へと神経を向けてる。どっちかというと鬼達へと向ける神経の方が大きい。
なにせ砂獣は脅威にはなり得ないけど、鬼は一体でどうしようもないからね。もしかしたら砂銃をおとりに使って、こっちへと攻撃を仕掛けてくるのが狙いかもしれないし、警戒しておくことに越したことはない。
「はれ?」
なんか視界がいきなりぐにゃんぐにゃんとし出した。何を言ってるのかと思うかもしれないけど、そうとしか表現出来ないんだもん。もしくは凄く酔っ払った時みたいな? 泥酔状態みたいな状態なのかも? 実際私は酔ったことなんかないからよくわかんないだけど……でも千鳥足的な言葉は知ってる。
それを思い浮かべると、今の私の状態はそれに近いのかなって……
姿勢を制御出来なくなった私――というかG-01はぐらっと傾いて宵の空間を落ちていく。私がグラッと来たとしても、G-01が通常常状態なら、そこは上手く姿勢制御やってくれるはずなのに……
「AI、どういうこと?」
私は頭を押さえながらそう言うよ。一応色々と調べてるけど……ごめんだけどモニターの文字が二重にも三重にも見えて読み解くことは不可能なんだよね。
なら頭に直接……とか思ったけど、こっちもなんか駄目だ。脳内の処理能力が著しく低下してる。さっきようやく処理能力上がったのに何で? もしかして短時間だけ……とか? それは残念すぎるけど……
『どうやら特殊な力が伝わってきてるようですね』
「どいつ……?」
『あの飛んでる砂獣です』
なるほどね……あの蛾のような砂獣が原因なのか。あいつは多分後方支援的な役割がありそうだね。真っ先にムカデの改造種が向かってきてて、その後ろに棒っきれみたいな砂獣が居る。そしてその後ろに蛾の改造種は居る。
でも、そんなの知らないよ! 一番厄介な奴から倒すのは常識だ! 回復役から倒せって言うからね! 回復までするかは知らないけど、後方の奴から潰すのは戦術の常識だよね。なので私はおかしな体にむち打って、前へと出た。