uenoutaの日記

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転生したらロボットの中だった(ただし、出ることは出来ません)運命という世界線を壊せ 459

「陛下、遠路はるばる、このようなところまでご足労いただきありがとうございます」
 
 そう言って現れたのはラパンさんだ。軍が分かれて王様達が乗った馬車を中へと誘い込み、アズバインバカラへ入る為の門の前で彼は待ってた。その側にはこのアズバインバカラを支える重鎮達が侍っている。そして王様が馬車から降りると皆が平伏した。
 いや、皆というと軍隊とかも――になっちゃうか。一応今は緊急時、流石に敵を向かえるための軍人達は膝を折ってない。そんな場合ではないからだ。でもラパンさん達、お偉い人達は膝を折って王様達、いやひいては王族を歓待してる。
 
「よい、面を上げよ。今はそんなことをやってる場合でもあるまい。それに我らはそなた達に感謝しておる。よく教会に反旗を翻してくれた。教会よりも我ら王族に重きを置いてくれた。この通りだ。迷惑を掛けると思うが、よろしく頼む」
「父上!」
「陛下! 我らは教会の信ではありません。陛下の信なのです!!」
 
 王様が頭を下げたから周囲はびっくりだ。王様の長男のアヴァーチェも思わず声を上げてた。ラパンさん達もびっくりしてたし、そういえば俺の故郷の世界でも王様は頭を下げない人だった。多分王様は頭を下げてはいけないんだろう。それにこんな大勢の前では特に。
 実際、軍の奴等とか、賞金稼ぎの奴等とかまっすぐ前を見てるように見えて、チラチラこっちを見てる。軍は箝口令とかしけるけど、賞金稼ぎ達にはそんなの効果無いからな。奴等は酒が入れば何でもペラペラ喋る。そういう奴等だ。この話も市中に伝わるだろう。
 まあけど、それよりももっと大きなインパクトを残せばきっとそっちが話題の中心になるだろう。そしてそれが王族の権威の復活の象徴にしなくちゃいけない。今は王族は教会よりも軽んじられてる。それは正しい形じゃない。
 
「さあ陛下、長旅は疲れたでしょう。早速宮殿へとお越しください」
「すまぬな……そうし――」
「待ってください」
 
 俺はここで待ったを掛けた。こんな王様とラパンさんの会話の途中に割り込む……本当はこれだけで極刑物かもしれない。でも俺をとがめる者は居ない。なにせ信用は日頃から築いてる。
 
「どうしたのですか勇者様? ここはすぐに戦場になる。早く安全な場所に移動した方が良いと思ったのですが?」
「そうですね。王様以外の人達はそうしましょう。ですが王様は恐れながらここにとどまっていただきたい」
「私がここに……戦場に……か?」
 
 流石にこれにはちょっと周囲が動揺してる。なにせ今は砂獣の大群が迫ってる。混戦になるだろう。王様が危険……当然の判断だ。
 
「王様は私が必ず守ります。これは必要なことです。王が率先してこの脅威を退ける……その格好が必要だとは思いませんか?」
「なるほど、ただ逃げてきた王ではないと……そういう喧伝が必要だと言うことですね」
 
 ラパンさんは理解してくれた。けど……王様は青ざめてる。実際、道中も震えてたもんな。あれだけの砂獣の前に……いや前に行かなくても、堂々と後方で立ってるだけでも怖いんだろう。けど……傀儡で居たくない……王族の権威の復活を求めるのなら、ただ後ろに居るだけじゃ駄目だろう。この世界は物騒だ。
 民衆が求めてるのは強い王だろう。それを示せれば、きっと教会に寄ってるこの世界の人々の心を少しは引き戻せる可能性はある。