何故かノアが魔法を使うと俺の陣とノアの陣が混じり合っておかしくなると言うことが分かった。まあおかしくなったからと言って何か不都合があること言えばそうじゃない。寧ろ好都合しかない。今のところは……だけど。良い方向に今のところ俺の陣とこの世界の陣は噛み合ってる。けどそれってたまたまでは? と言う気もする。なんでもかんでも良い方向にいくなんて都合良すぎる。
まあ俺は勇者だからな……
(運は良いつもりだけど……)
それでも……ノアだって何が何やら分からずに使ってるわけで……上手くいってるのがかなり奇跡に近いというか……今の所砂獣の大群の相手でこっちは引き金を離すような事は出来ないから、魔法はノアに頑張って貰うしかない。
(体を貸す……なんて事は流石に出来ないからな……)
出来ないというか、やりたくない……と言うのが本音だ。なにせ一度この体はノアに乗っ取られたわけだしな。それがあるから出来るとしても、ノアに体を譲ることは出来ない。また乗っ取りにかかる可能性がないわけじゃない。まあ最悪、ノアの魔法に何か不都合が生じても、俺が直前で取り消せばどうにかなるだろう。
ノアが発動してるわけだが、俺の力も混じってるから、陣は俺のとノアの奴が混ざってるわけだろう。なら、干渉できない理由はない。
白い雷でかなり減って少しだけ余裕が出てきた……それに回復魔法も一度きりじゃなく、継続回復能力を付与したことで、此方の勢いがついた。でも敵もすぐに数を補充してくる。ノアの奴の魔法も強力になって発動してるから、なんとか持ちこたえてるが……ただ数で攻め続けられたらいずれは押し込まれるだろう。
何せ俺たちには疲労があるが、砂獣にはそう言うのが見えない。
(どうせなら指揮官的なのが居れば楽だったんだがな……)
軍とかなら、それこそ指揮をしてる奴を優先的に倒せば、それで統率が崩れたりして戦況が傾いたりする。それは比重の違いだろう。それぞれに乗ってる荷の違い。ただの一般兵と昇降とではそこら辺が違う。でもどうやら砂獣にはそういうのは居ないみたいだ。確かに砂獣は色々なタイプの奴がいる。それによって戦闘力は変わるが、この中に司令塔みたいな奴がいるかと言われれば……いない。
居るとすれば、それこそ都市核を取込んだような特殊な砂獣になるんだろうが……そういう存在の気配も別にない。ただ一般兵の数で向かってきてる、そんな感じ。
そしてその一般兵達の頭にあるのは、目の前の敵を踏み潰せ――とかだけだろう。だからこそ、こいつらはその体に死を与えるまで止まらない。本当に厄介だ。
そんなことを思ってると、地中からでっかいサソリの砂獣が現れた。デカいし強そうだが、あれも別に司令塔ではないだろう。ただ強い一兵卒……そのサソリが口にエネルギを貯めてる。そして放った。その角度、完全に俺たちではなく、アズバインバカラの街中へと向いてる。
俺は銃口を素早く向けて、サソリが放った光に此方の放った光をぶつける為に引き金を引いた。
「間に合え!!」