『貴方はシザーラス人の今をご存じですか?』
「いや、滅びた……とは聞いてるが、それを確かめる事も我には出来ないからな」
色々とこの施設とそしてこの施設が持つ、沢山浮いてるパーツやなんやらの保管方法がよくわからない技術の塊……とか言うのをペラペラと喋り終わったこの施設のAIは唐突にそんな事を言い出した。
だから我は神に言われて知ってた事を返した。我はそのシザーラス人とやらに対しての知識が殆どない。神……と呼ばれてる上位の存在が滅びたと言ってた――とそんな薄い知識だ。けど、我は上位の奴等だから完全に正しい……などと盲目的に思うような愚かな性格はしていない。何せ上位の奴がただただ正しいと思うその思考は、我が付き従ったてるかのようではないか。
そんなのは業腹だ。まあほぼその一点に尽きるが、ただ単に情報がなさ過ぎるってのもある。人という愚かな奴等なら、それこそ神と名乗る奴が告げたのなら、ありがたくその言葉を受け止めるのかもしれない。
だがあいにく我はそんな単純なやつではない。だからシザーラス人が本当に滅びたかどうか……それは疑ってはいる。なにせ世界の各地にこんな物を残す奴等である。しれっと生き延びててもおかしくないと思うが……そこら辺の情報はここにはないのだろうか?
『そうですね。私も明言は出来ません。何せそれに対しての明確な答えは持ち合わせては居ませんから』
「貴様はどう思ってるんだ?」
無機質な声にこれを聞くのもどうかと思った。何せこの声の主はどうやらここの施設を滞りなく管理運営するために為の自我――それをAIというらしいからな。だから自分の意見なんて持ってても仕方ない――と思ってたがどうやらこいつも長くこんな場所にずっといたせいだろう。AIの中にも寂しいとか言う感情が湧き起ったのかもしれない。
『わかりません。わかりませんが……この施設に残された最後の彼らの言葉……それを考えるにシザーラス人が追い詰められていたのは確かでしょう』
「空獣と戦ってたんだよな?」
『それは確かですね。何せこの施設のパーツ達は空獣に立ち向かうための手段を未来へと託すための施設ですから。それを考えると、シザーラス人は敗戦濃厚となってきた時期に、ここを作った……と言う風に考えるのが最も自然ではないでしょうか』
「ちなみにだが、シザーラス人のここに残した言葉はなんだったんだ?」
興味が湧いたのでそれも聞いてみた。もしかしたら教えてくれないかもしれない。権限が必要です……とか言うかと思ったが、やっぱりずっとこんな地下深くにいて寂しかったのか、そんなの必要なかった。
『きっとこれが未来の役に立ちますように』
なるほど……沈黙が落ちる。さっきまでAIがペラペラと喋りまくってたから五月蠅く感じてたが、こうなるとなんだかここの空気は重いな。なにせずっと開かれる事はなかったんだろうし仕方ないか。
だが……そうだな……確かにこれを聞くと、既にシザーラス人は……とも思える。そんなちょっと重い空気が流れてるなか……我は気を遣って「すまな――」とか言おうとしたら、かぶせるようにAIがこういった。
「それはそうと、早くデータをください』
我のこの気を遣おうとしてた感情を返せ。いや、めっちゃ不味いんだけどな。