『もしかして……』
不味い、我があまりにもこの施設との接続を拒む物だから、流石のここのAIもいぶかしんできてるんじゃ……とかそんな疑念を持つ。これ以上の引き延ばしは流石に無理か……
『私の事を心配してくれてるのですか? 確かに私はここにあるパーツを引き渡す事が出来たら、もう存在する意味など無い哀れなAIです。ですが、役目を全うできる。それがどれほど名誉な事か……この暗い場所で、ただただ月日が流れていくのをずっと数えてるだけの時間……そんな夢も希望もないような時間に貴方は来てくださった。そして私は託された役目を全うできるのです。それはとても幸運でしょう。何せこんなことは起こりえない……と想ってましたから。
なので私の事など、気にしないでください』
不味い……我は魔王だ。魔王である我は、天上天下唯我独尊……非道で残虐……戦いを求めるバトルジャンキー……それ以外など全て些事である――とかなんとかそういう存在の『魔王』だ。まあ我はそんな事を言った覚えはない……いやバトルジャンキーの部分は認めるが……認めるが……それ以外は勝手な印象が先走った結果でしかない。
まあ戦いたいが為に、沢山の命を奪ってきたのは確かだ。弁解なんてする気は無い。全ては糧だ。我が強くなるための糧になって貰っただけ。そんな我なんだが……なんかここのAIはやけに我を美化してないか? 我は別に一ミリとも、こいつを気にしてなんかない。
勇者の奴は過度に他人を気にするが、我が気にするのは常に自分だ。自分にとって有益かどうかでしか、他人など判断しない。あと愉快かどうか。それで言うと……このAIとかいうのはなかなかに愉快ではあるかもしれない。
まあ我がここのパーツほしさにその凶悪さを見せてないからであろう。我の本性が……いや本心が知られればAIはここのパーツを我に託そうとはしないだろう。
(だが……データを吸われればジゼロワンの事は隠しておけないし、それをしないと絶対にこいつはパーツを託す事はしないだろう。我の言葉だけを信用するようなやつではない)
一体どうすれば……こいつはただここでこのパーツ達を管理して護るための役目だった。そして今、その役目が終わろうとしてる。
「貴様は、ここのパーツがなくなったら、自動的に機能停止になるのか?」
『どうでしょうか? エネルギーの続く限りは稼働してるのかもしれません。ですが、百年もせずに止まる事でしょう。なにせここのパーツがこの施設を稼働してるキーでもあるのです』
「それは『変換高効率コンテナ』か?」
『ええ……』
やっぱり。その話を聞いて、せめてそれだけでも俄然欲しくなったぞ。だから我は賭に出る事にした。
「きさま、我と共に来ないか?」
そんな提案をしてみたんだ。