「あれは」
そんな事を呟いてAIは態勢を変えて減速に入る。具体的にはくるっと体を回転させて、後方にあった足を前に持ってきて、ブースターの出力を調整。そうやって徐々に勢いを殺して砂に着地する。そして態勢を低くして、砂の山を登って顔を出す。すると……
「集まってますね」
そう言って視界が変わる。砂獣が緑色に塗られたように見えた。もう十分、このタイプの砂獣のデータは持ってると思うが……AIは用心深いらしい。集まってるのは殆ど蟻型の砂獣だ。なんか背中に砲台を背負ってるちょっとしたタイプ違いもいるけど、あまり問題になるようなやつでは無い。
問題はそこじゃなく、なんでこんな場所にこんなに砂獣が集まってるのか……と言うことだ。何故かめっちゃ砂獣が集まってる。普通はこんなに一緒に行動する事って無い。
精々が街を襲うときくらいだ。そうじゃなかったら、この広い砂漠に点在してるのが殆どで、それも大体砂の上を動いてると言うよりも、獲物が近づいて来たら、近くの砂獣達が砂から這い出してくる……的な感じだ。勿論徘徊してる奴等もいるんだけど……基本的に砂獣は自身で完結してる生物? と言うか存在だから、獲物は人間以外には反応なんてしない。
だから別に人もいるわけでも無いのに、こんなに集まってるのは珍しい。集まってる中心部分に魔王の反応はある。
(魔王の反応に対して集まってるのかな?)
でもその反応を感じれるってのがおかしい。だって別に強大なエネルギーを発してる……って訳じゃ無い。私やAIが魔王の居場所を把握できるのは、私が魔王の上位の存在だからだ。普通に上位者の機能としてわかること。AIはもう別に上位って訳では無いが、魔王の位置は動いてないからね。私のデータを引用してるんだろう。
「掘ってる……興味深い行動ですね」
私もAIも互いに独り言を言ってる。なにせどっちも別に通信をしてるわけじゃ無いからね。てかAIには私が覗いてるのバレてないはずだし。いや、こういうことをしないなんて思ってないと思うけどね。こういうことが出来るって事をあいつがわかってないはずが無いし。でもわざわざ通信をオンに何てしない。だって魔王と合流したAIがどんな行動をとるか……何を吹き込むか。それともただ単に私の元に戻るように言うのか……なにか悪巧みをするのか……それを見届けたいと思ってるからね。
さてさてAIはどうするのか……そんなことを思ってると、砂から突き出してきた無数の黒い槍によってここらに集まってた砂獣が一気に串刺しになった。それにそれだけじゃ無い。その黒い槍が赤く輝くと……砂獣達がエネルギーに変換されて吸収された。
(何今の?)
ちょっと、今の機能、私も欲しいんですけど? そう思った。