「私の事はこれからは『アイ』とお呼びください」
そんな事をいって綺麗なお辞儀をするAI――改め『アイ』。けど、アイってさ、AIだからアイなんだよね? 安直!! どこまでも安直じゃん。てか他のAIが名前ほしがったらどうするの? AI2やらアイ3とかつけることになっちゃうじゃん。いや、つける必要は無いし、他のAIが出てくるのかも知らないけどね!!
「何のつもりだ貴様?」
おや? なんか名乗っただけなのに、魔王が切れ気味である。私にはあんまり見せない感じだね。私的にはまあ魔王だから粗雑だけど、けっこうちゃんとしてるじゃん――ってのが魔王の印象としてある。
尖ったナイフみたいな印象は実は無い。けど……今の魔王はまさに尖ったナイフって感じでビシバシと目の前のアイに敵意を振りまいてる。めっちゃ美女なのにね。普通はもっと鼻の下を伸ばしたりしそうだが……まあ魔王だからね。色落としとか効かないか。しょうが無いね。
「何のつもりもなにも、挨拶をしただけですが?」
確かにその通り。ただの挨拶にキレ散らかしてくるなんてキチガイの所業だよ? そんなにけんかっ早かったか? でもどうやらそうじゃなかったみたいだ。
「貴様は何故ここに来た? 我の行動がわかってるから来たんだろう? いや、寄越された。なら本題を言え。我は回りくどいことは嫌いだ」
なるほどね。そもそもよんでもないアイがやってきたときから、魔王はもう警戒してたんだろう。そもそもがすんなりと私から離れられる……何て思ってなかったと。結構ショックだよそれ? 私はちゃんと話してくれれば、反対何てしないのに。そのくらいの信頼関係はあると思ってた。
「そうですね。私も回りくどいのは嫌いです。生命というのはそこら辺を理解できません。必要な情報を必要なときに渡しさえすれば良い。それを怠るから、色々な齟齬が起きると思いませんか?」
「質問してるのはこっちだが? 貴様はあいつとは違ってイライラするな」
あいつとは私の事かな? 私の事は意外と気に入ってくれてたのだろうか? なんか嬉しい。いや、AIの事をディスってるからそれが嬉しいのかもしれない。ふふ、魔王はあんたよりも私が良いって――ね。
「それは失礼しました。では単刀直入に言いましょう。貴方の得た物を返しなさい。それは本来なら此方のアップグレードに使うはずの物の筈。ユグドラシルシステムもない存在に渡ってもそれは宝の持ち腐れでしか有りません」
「悪いな、これは我が正当な手段で託された物だ。返す気はサラサラない」
なんかめっちゃ二人の視線が絡み合ってる。いやねっとりとはしてないよ。バチバチしてる。めっちゃバチバチしてる。てか完全にアイの奴……喧嘩売ってるよね。なんでそんなことするの? 状況だけ聞いてくれば良いのに。そんな頭ごなしに返せなんて……魔王が応じるわけ無いじゃん。アイだって魔王の性格は把握してるのに……あいつ、本当に何を企んでるの?