『ちょっと、私にもお別れくらい言わせてよ』
なんか良い感じに別れたアイと魔王。二人は戦ってたはずなのに、その別れ際はなんだか気持ちいい物になってた。一体何が? とか思ったが、色々と目的は達成できたから、あんまり深く聞くのもどうかと……だってなんかアイのテンションが低いし。
こいつにテンションなる物があるのかどうかも実際は怪しいんだけど……
「あまり無粋なことは言わないでください。てか、話しかけてきて良いのですか? 隠れてみてたんじゃないですか?」
「うっ……」
確かに隠れてみてて、ヤバくなったら止めようと思ってたけど、なんかいつの間にか良い感じに終わってたからね。実際アイが戻ってくるまで秘密にしておいても良かったんだけど、ついつい。確かに私は魔王の離脱を反対はしてなかったけどさ、なんか有るじゃん。魔王の別れの言葉を貰うとかさ……実際、そんな湿っぽいことをするようなやつではないとわかってるけど。
でもちょっと寂しかったから、思わず感傷に浸ってるアイに声を掛けてしまった。
(ん? でも待てよ……感傷って……)
アイはけっこうな時間、魔王が去って行った方をみてた。魔王が行ったと同時に、私の方に来てたAIもいなくなったんだよね。私の方にとどまる気は無くて、魔王について行ったようだ。あのAIがいれば、魔王もきっと寂しくないだろう。
あいつは強がりだから、一人でも何らもんだ無い――ってとか言うだろうが、仲間としては心配じゃん。それにすぐに無茶をする奴だし……悪運は強そうだし、今の魔王に勝てる存在なんて早々居ないと思うが、それでも一人では何かが起きたときにどうしようもなくなる可能性は高い。
それすらも魔王は楽しみに出来るようなM体質だと思うけど、こっちは心配だよ。だからその為にもあのしっかり者のAIは良いと思う。とりあえずあの子には「魔王をよろしくお願いします」とは言っておいた。
そして私の所には魔王がアイに渡したパーツのデータを置いていってくれた。そもそもがあの子が言ってたけど、それが条件だったみたいだね。
あのAIが言うには、魔王はそれこそ『高効率変換コンテナ』くらいしかパーツをとってないみたいだ。あのAIがその使命を全うするためにも、他のパーツは全て私に託して、それであの子はその存在を終わらせる筈だった。
でもどうやらそれは止めて魔王と共に行くことにしたみたい。其処にどんなやりとりがあったのか……実際みようと思えばみれる。なにせ魔王や勇者の過去ログとも言うべき物は大本であるG-01に保存されてるからね。
でもそれは無粋という物だよね。私はちゃんと互いのプライバシーを守れる女だ。
「私知らなかったよ。アイがそんなに魔王のこと気に入ってたなんてね」
ニヤニヤしながら私はそう言うと、アイは努めて冷静にこう言ってきた。
「別に、私はこの体で初めて目的を達成したことを感じてただけですよ。それにそんなことを言うとパーツを渡しませんよ」
「ふふふー、アイにそんなことが出来るのかな?」
私は更にニヤニヤとしながらそういうと、アイは怒ったのか、アズバインバカラとは別方向に歩き出した。そしてなんか無理矢理私とのリンクを切った。くっ、流石は元G-01のAIなだけあって、気づかれてるとこっちからはどうしようもなかった。
どうやらシステム面ではまだまだ私よりもアイの方が上のようだね。