「サーザインシャインインラ」それは水が豊富にあるこの世界にしては珍しい恵まれた都市の名前……だった。何故にだったかというと、その町は今、危機に瀕しているからだ。今やサーザインシャインインラはその存在を風前の灯火に落としてる。
美しい街が砂の中へと落ちそうな……そんな状況だった。誰もが思った。何でこんなことにって。こんな世界だから、安全なんて何処にも無いはず。でもそれでも……いや、それなのにこの町の人達はそういう危機を忘れるかのような生活をしてたらしい。
サーザインシャインインラの街には水路が張り巡らされて、豊富な水源から常に綺麗な水が町中に流れてた。そしてその水はこの町だけで消費するんじゃ無くて、他の街に輸出とかやって生きるために必要な水だからこそ、暴利を貪って他の街から沢山の物資をかき集めて出来た美しい街。それかサーザインシャインインラだった。
協会とも懇意にしてたサーザインシャインインラの上層部は何かあると協会がその戦力を出し惜しみ無く派遣するという盟約を交わしていた。だが……いまその盟約は簡単に破られた。サーザインシャインインラにある、中央の総本山の教会の次に美しいと言われる水の上に佇むように出来てる教会の一室で、その町の神父は嘆いていた。
「こんな筈では! こんな筈は無い……」
そんなことを言って崩れ落ちる。そんな神父に一人のシスターが声を掛ける。彼女も不安そうな顔をしてる。
「神父様、中央の方々はなんと?」
恐る恐るとそんな風に聞く。すると神父は大きく息を吐いて吸った。そして彼女にいつもの優しい微笑みを向ける。
「何でもありません。住民の方々の避難はどうなっていますか?」
「まだ砂獣達は外周にいるだけですので、なんとか皆様を落ち着けて協会内に案内しております」
「そうですか。ですが全ての人を教会には避難できません。私はそこら辺を宮殿の皆様と話し合ってきましょう。大丈夫、なにも心配いりませんよ」
そう言って神父はその場を後にした。
(おかしい。砂獣が波を起こしてるのに様子見をしてる? そんな話は聞いたことがありません。それに中央とは連絡が取れない。まさかとは思いますが……この波は……)
時間は戻ってサーザインシャインインラに一人の子供が居た。彼はガキ大将で、子分を従えて街の一角を我が物顔で牛耳ってた。勿論そんな気分でいるだけだ。その一角では悪ガキと認識されてるほどにはなかなかにやんちゃな子供だ。
そんな彼は今日もそこら辺で拾った棒を振り回しながらいたずらをして遊んでいた。そんな中子分の一人が何かを発見した。
「親分、アレなんですかね?」
「どれだよ?」
「なんかそこの草むらにいます!」
「敵か!? 俺の聖剣がぶった切ってやるぜ!」
そう言って彼はその草むらを棒でかき分ける。すると一匹のサソリが出てきた。でもたまに見かけるサソリとは違う。そのサソリの胴体には綺麗な石がはまってたんだ。
「おお! こいつお宝を持ってるぞ! 取り囲め! 逃がすなよ!!」
「へい親分!!」
「珍しい奴っすね。きっと自慢できますよ!」
そう言って彼らとサソリの戦いが始まった。