部屋いっぱいに広がる光、それに驚愕する二人は声にならない言葉を発してるのか、口がパクパクとしてる。そして数分間、その光は部屋を満たして、そして静かに消え去っていく。まるでさっきまでの光景が夢だったかのようにおじさんとおばあさんはほうけてる。
どうなんだろうか? イシュリ君の脳みそは治ったんだろうか? とりあえず私はイシュリ君をスキャンしてみる。すると――
(戻ってるじゃん)
――そうなのだ、ちゃんとイシュリ君の脳みそは復活してた。これなら問題ないんじゃない? わかんないけどね。もしかしたらなくなってたという事実はあるし、この脳がどれだけ元の状態になってるのかもよくわかんないんだよね。きっと私が……というかG-01が無くなる前のイシュリ君の脳みそを一回でもスキャンしてたら、その違いが詳細にわかったと思う。一応いまでも、残ってた脳部分から全体像を想像する……というか仮想的に再現するってことがG-01には出来る。でもそれってやっぱり完璧ではないと思う。たくさんのパターンの中からきっとこういうのだろうって感じで作ってあるだけだからね。
まあそれが完全に信頼できないわけでもないと思うけどね。それで実はぜんぜん違う人になってしまってたら……責任持てない。まあ今回のは勇者に全てを投げられるけどね。なにせ魔法を使って直したのは勇者だ。
「終わりました」
ほうけてるおじさんとおばあさんに対して、勇者がそう声をかけた。それによってようやく二人は「はっ」としたようだ。そして詰めうるようにして――
「イシュリ――イシュリは!?」
「坊っちゃんは助かるんですか?」
――そう迫ってる。見た目的には実際、さっきの光で外傷とかは完全になくなったように見える。実際勇者はもとの世界で勇者やってたときは、そんなに回復魔法は得意ではないと言ってた。でもこれを観ちゃうとどの口が言ってるんだっておもうよね。
まあそもそもが力が大きくなったから、治せる物、そして治せる怪我とかに対してその力でゴリ押せる様になった感じらしい。それは勇者にとっても予想外のことみたいな? だからだろうね。実際、勇者自身は本当にイシュリ君を救えたかわかってない。
特大の力で回復魔法を施したってのが勇者の感覚だろう。もちろん事前に私がイシュリ君の状態を伝えてたし、脳みそをどうにかしたいと考えて勇者は回復魔法を使ったはずだ。だからこそ、ちゃんと脳みそが回復してるんだろうからね。
でも実際、詰め寄られてる勇者はこっちをチラチラと観てる。実際、勇者は自分で脳みその状態を確認できないんだろう。回復魔法とか出来るのは私達の中では勇者だけだし、怪我の状態、体の状態を知れるスキャン的な機能って大切だよね。
後で教えておこう。そう思いつつ、私は通信で「治ってますよ」と勇者に教えてあげた。それを受けて勇者は――
「はい、まだ油断は出来ませんが、回復魔法はうまく効果を発動したみたいです」
――といった。なかなかに言い方が妙だね。うまく逃げ道作ってる。勇者なら希望を持たせるというか、もたせまくってもおかしくないと思うけど、この勇者、案外現実主事だよね。まあけど二人にとってもそれでも全然構わなかったのだ。消えかけてた希望がつながったんだから。そもそもがベッドに横になってたイシュリ君は横になってても、目は見開き、口は半開きの状態だった。けど今はどうかというと、なんとちゃんと眠ってるようにみえる。
それだけでも、なにかが変わったんだと……しかも良い方に変わったんだと二人には解釈できたみたいだね。