「その人は?」
『彼女はですね……』
私はカクカクシカジカ――彼女のことを説明した。すると――
「この女が!!」
そう言っておじさんが彼女に向けて、拳を向けようとしたから勇者が止めた。まあ私の説明を聞いたら、イシュリ君に入ったサソリ……アレを生んだのは多分彼女だ。だから恨みが彼女に行くのも仕方ない。
「離してください!! この女がイシュリを!!」
そう言っておじさんは暴れるが、勇者の力に敵うわけない。
「落ち着いてください。彼女にまずは話を聞いてみましょう」
『そうですよ。それに彼女のこと、見覚えはないですか?」
「ふーふー」
私達の言葉を聞いて、おじさんは空気を何度も吸っては吐いて、心を落ち着けようとしてる。勇者の拘束を解けそうにないってのもあるだろう。それを何回か繰り返して少しずつ落ち着いて来たところで改めておじさんは彼女をみる。
「彼女は……確かに前からいたような。見たことはある気はする」
『この人が最初から教会の刺客だったのか、それともなにかがきっかけでこんな事になったのか……そこら辺で彼女の罪も変わると思いますけど?」
「砂獣を生み出せる存在か……確かにそんなのが一体いつからいたのか……それは興味はある。少しまっていてください」
そう言って部屋から出ていくおじさん。私と勇者は大人しく、彼が返ってくるのをまつ。その間にも、私は色々とドローンを動かして情報収集はしてるし、彼女が出産したサソリを調べたりもしてる。
「やっぱり一緒ですね」
「イシュリ君の頭に入ってた砂獣とついさっき産み落とされた砂獣がですか?」
「ええ」
「にわかには信じられませんね。人から砂獣が生まれるなんて」
確かにそう言われればそうかもね。私は直接的にその場面を見てるから受け入れたけど、ただ聞いただけではそれが信じられないこと――ってのもなっとくできる。
『精子を流し込めば生んでくれるかもしれませんよ?」
「ぶっ!? そんなこと出来るわけ無いでしょう!」
勇者が顔を真赤にしてそんな抗議をしてくる。まさかそんな童貞でもあるまいし……あるまいし? だよね? 勇者様ともあろうお方が……そこまでプライベートに踏み込んでないからね。私はちゃんと配慮できる系女子だし、上司だからね。でもこの反応……
そんなことを思ってると、おじさんが帰ってきた。どうやら彼女のことを調べてきたみたいだ。