「もしかして……この波は私が生んだ……化け物たちが……」
「それは……」
おじさんでは判断できないから、彼はこっちを……透明だから見えないだろうが、私がいた場所を観てくる。はっきりと言えば、そうとも言えるし、そうともいえないよね。間接的にはヌメリアさんが生んだ砂獣が関わってはいるが、流石に今サーザインシャインインラを囲んでる程に生んでるわけない。なにせ数千以上はいる。流石にそれだけの数を産めるとは思えない。もしかしたら一回で一体じゃない可能性もあるけど。
でもそれでもさすがにね……とりあえず勇者が思念で「それは違います」とか伝えてる。それを受けて、おじさんも首を横に降った。
「それは違う。流石にあんなにたくさん産んでないでしょう?」
「そうですけど……でも私のせいではないんですか?」
「それは……なんとも言えないが……」
実際おじさんはなんで波が発生したのかとかわかんないからね。そしてヌメリアさんは砂獣を生んできた事実がある。そうなると、もしかしたらその砂獣達がこの波を招いた……かもしれないと思うのも無理はない。実際は教会の思惑でしかないだろうから、すべての責任は教会へと転嫁していいと思う。そもそもの諸悪の根源は教会だからね。自分たちで責任を感じる必要なんてない。
それにヌメリアさんが砂獣を生むようになってるのも教会のせいなのは間違いないし。
「とりあえず、あんまり気に病まないことだ。君がおかしくなってるのは教会の……教会のせいだ」
「私がこんな事になったのは教会の方々が? でもそんな事……」
なんかヌメリアさんは自分がこんな風におかしくなったのが教会のせいとは全然思ってなかったらしい。時系列順に考えたらそうとしか……とか思わないのだろうか? でも流石に砂獣を生むようになってるとか、なにが原因なんてわかんないか……私たちは教会の裏の体質を知ってるが、この世界の人々の心の支えは教会なのだ。
だからそもそもが教会を疑うって思考がないんだろう。教会は絶対的な正義……そういう考えが根付いてる。それがこの世界を支えてきた教会のへの信頼。
(怖いね。これが宗教の怖さだね)
刷り込まれた考え方ってそうそう書き換えることが出来ないよね。このために、教会は色々と頑張ってきたんだろう。そして庶民の……普通の皆さんは教会の表側しか知らない。
「教会には表だけじゃない。裏の顔だってある。それに協会は魔法を持ってる……我々には考えも及ばない力だ。君をそんな風に出来るのは教会しかいない」
「でも……でも……それなら……どうして……こんな……」
「それはわからない」
「私は……もとに戻れるんでしょうか……教会の方にお願いすれば……」
「それは……」
どうなんだろうね。実際、アイツラが元に戻すなんてしないような……都市核は回収したいだろうし、もとに戻る=殺すってことになりそうな気がする。はっきり言って、そういうことを簡単に出来るのが教会だ。
「君をそんな風にしたのは教会だ。教会に頼るべきではない。それに……この自体をどうにかしないと。波を乗り越えないとどうにもならない……」
「そうですね。ですが……」
「まだサーザインシャインインラは終わってはない。既に味方はいる」
そう言ってこっちを……というか勇者の方をおじさんはみる。色々と観察してたけど、うん、どうやら彼女、ヌメリアさんへとかけられてる術式は完全に独立してるみたいな感じだ。だから教会が監視してる……的なことはないと思う。多分位置くらいは把握できるようになってると思うけど、会話が筒抜け……とかはない。
だから勇者はヌメリアさんの前に姿を表す。彼女はとりあえずこちらに引き込むべきだろう。それに教会以外で彼女のことをどうにか出来るのは私たちしかいない。