夜の学校は不気味だ。誰かが……いや脈々と語れ継がれるそんな噂も、彼の前では意味はない。なにせいきなり学校の職員室に現れた夜よりもくらい黒い渦。それから一人の少年が現れたのだ。
彼の名前は『野々野 足軽』この学校に通う高校二年の男子生徒だ。特徴は、別に特徴がないことが特徴といえるような生徒だった。ほんの一年前までは。ある日彼は超能力に目覚めた。
それから彼の人生は変わった。大いなる力を手にしたのだ。それから彼は人知れずに努力をして、その力をものにした。そして今日はその力を使って学校へと忍び込んでる。
昨今の学校は防犯が強化されてるが、いきなり職員室へと現れるなんて想定してないだろ。それでも防犯カメラがあるからそれには超能力で用意してた同じ角度の職員室の写真を手前に掲げてそれを映させている。
え? なんでそんなアナログな事を? って。それは超能力を使えても野々野足軽にはそんな機械の内側までの知識はないからである。デジタルにはプログラムというものが使われてるが、それはチンプンカンプンなので下手に弄れないからアナログで確実な方法をとってるのだ。
もちろん夜中の職員室は真っ暗だ。でも野々野足軽には問題ない。なにせ超能力で目を強化してるからだ。昼間のように見ることもできれは、レーザー的なものを見ることもできる。外部の物を繊細にいじるのは野々野足軽は苦手だったが、自分の体はどうにでもなる。
そうやって目的の物を探した。だけどそれは……この場所にはなかった。
「なん……だと?」
彼が求めてたのは明日から始まるテストの問題だ。学校にくればそれがあると思ってた。だって漫画では職員室に事前にテストが保管されてたはず……けどそこで野々野足軽はばっと異空間から取り出した漫画の発刊日を裏面で確認した。それは二十年以上も前の作品だった。
「時代は移りゆく……か」
そうつぶやいて窓の外の曇天の隙間からのぞいた月を見上げた。テストはなんとか平均点だった。超能力があればテストだって楽勝ってのは否定されてしまった。