「とりあえず、その性欲はどうにかしないとですね」
「この体をブサイクにでもするの?」
「流石にそんなことは出来ない」
とりあえずこっち側にいれるということは、好き勝手させる訳にはいかない。というか、この人、ヌメリアさんはいいんだけど、その中に潜んでるこの人格が表に出てると、風紀がね……
「ちなみにその魔法は貴方の意思なんですか?」
「意思というか、特性だね。なにせ私は生を集めるためだけに生み出されてるから。効率よく集められるように、魅了が発動してるの」
どうやら他者を誘惑するその魔法はこの人格自体が発動してるってわけじゃないらしい。性を集めるためのお手軽な手段として、その魔法が組み込まれてこの人格がある……ってことなんだろう。
存在に紐づいた魔法。確かにそれなら特性と言えるのかもね。ほら、生物の中には体内で毒を作ったり、電気作ったりするのがいるじゃん。多分アレと同じノリだよね。デフォルトの機能として実装されてるから、特性っていうね。
「それなら術式に介入できれば、どうにか……」
「まさかと思うけど、私の魅力がその魔法のせいだけだと思ってる?」
そう言ってなんかもぞもぞとしてる。そして口で「うふーん」とか「あはーん」とかなんか呟いてるが……簀巻きにされてるからね。ご自慢のバストもウエストもヒップも見えないから全然やらしくない。
まあ顔は可愛いけどね。でもムラムラとするような感じではない。体のほうが視界に入ると間抜けさが出るからだろう。エロさよりもなんか間抜けさが上回ってるおかげかも。
(こういう存在なら、それこそ魔眼とかも準備されてそうだけど……)
私の勝手な妄想なんだけど、サキュバス的じゃん。このヌメリアさんの中の人格さ。だからその魅了の魔法をふりまくのの他にも目があったら強制的に恋に落とすとか、発情100%になるとか……ありそうだけど……
まあ解析する限り、それは無いようだけど。
「流石に魔法がなかったら、いきなり襲いたくなったりしないでしょう」
「それはどうでしょうね。私にそれほどの魅力がないと?」
「貴方の魅力の問題じゃなくて、魔法がなかったら相手の理性の問題だ。いきなりどこでもヤるのはその魔法のせいでしょ?」
「それは、そうといえなくもないかもね」
めっちゃ濁してきたな。今まで自信満々だったのに……実際どれだけの美少女を前にしてもいきなり押し倒してソレをお股の所に押し込む……なんてするやつはそうそういないだろう。今まではこの人格は魔法でそれをさせてきたんだ。
だから魔法さえなくなれば、とりあえず普通に開放するくらいは出来るだろうと勇者は見てるんだと思う。
「ちなみに術式を任意で無効にすることは?」
「そんな必要ある?」
ハッキリとそう言い切るヌメリアさんの中の人格。任意で切り替えられるのなら、これからすることをヤる必要はなかったのに……
「それなら少し我慢してもらおう」
そう言って簀巻き状態のヌメリアさんに勇者はふれる。
「ちょっと下手に私をいじるとこの子だって……」
「黙ってろ」
そう言って勇者は目を閉じて集中しだす。