「まあそうなるよね」
一瞬……本当にほんの三分くらいは橋に出てきた砲台で砂獣を押し返すかもしれない……なんて思った時期があったかもしれない。実際、そこで阿鼻叫喚してる兵士たちはあの兵器に希望を持ったことだろう。けど……アレがたくさんあるのなら、そもそもがサーザインシャインインラに入られる前に、防衛線として配置しておくべきなのだ。
それをここの上層部が渋ったのか……それともそんなに数がないのか……多分だけど後者だと思う。流石に自分たちがピンチのときにまで出し惜しみなんてしないでしょう。しないよね? そこまで馬鹿なのか……それともここまでされてもまさかとは思うけど、まだ教会が助けてくれる――なんて思ってないよね?
「さて、私達はどうしようか?」
「どうもこうも、出ないとここは落ちますよ」
二人っきりだし、堅苦しい言葉遣いは不要だよね。いや、最初はそれこそ勇者の前でも堅苦しくやってたけど、最近ボロが出てるからね。それに気心がしれた中になりたいじゃん。勇者はあの魔王と違って私を舐める……なんて事もしなさそうだし、ラフに接していってもいいでしょ。
「でも、私たちは干渉し過ぎじゃないかな? まあそこら辺気にしないのならいいんだけどね。そもそもがここがこれだけ押されてるのって、ここの人たちが教会に頼りっぱなしだったのが原因でしょう。
ここで私たちが出て、窮地を脱したとしても、今度は私たちに頼りっぱなしになるのでは? 私達は確実にこの世界から居なくなりますよね。それなのに頼られると困ります。特に今の意識のままでは……まあ勇者がやりたいようにやればいいですけどね」
私はあくまでも積極的に介入したいわけじゃない。面倒ってことじゃないよ。このままじゃ駄目ってことだ。なにせこの街の人達は元々が教会に依存しすぎなんだよ。それが私たちに変わっても彼等はきっと変わらない。
ただ依存先が変わるだけ。それじゃあ駄目でしょう。
「それはそうですが、このままじゃあ彼等は意識を変える暇もなく消えることになりますよ」
「だから勇者が取る行動を止めるつもりはありません。私では出来ないことを貴方ならできるかもしれませんしね。心の奥になにか熱いものを灯すのは勇者の専売特許じゃないですか?」
私が出ると……ね。もう圧倒的じゃん。あの金色の鬼相手にはわかんないけど、そこらの砂獣なんて私にとって雑魚でしか無い。しかもG-01はでかいし、あんな存在他にいないからさ……ここの人たちはそんな圧倒的な存在が居るのなら……って思っちゃうと思う。それはいかんよ。とりあえずG-01が出るのはあの鬼が本格的に暴れだしてからだね。
一応狙ってはいる。なにせ鬼のエネルギーは美味しいからね。
「さて、とりあえず色々と仕込もうかな」
流石に勇者だけでここの人たちの意識を変えるのは厳しいと私だったわかってる。だからそういう空気を作らないといけない。おじさんやヌメリアさんとかは宮殿の方へといって色々と動いてもらってる。あの砲台みたいな何かが他にあるのなら全部出させる気だ。
そして勇者はなんだかんだ言って戦いに行くだろう。でもそれを誰も知らないとなるとだめだ。後で、教会やら、それこそここの上層部の奴等が勝手に自分の手柄にするかもしれない。そんなのは許されないよ。だから私はドローンたちを使ってここの人たちに今のサーザインシャインインラをしらせてあげよう。