(落ち着きなさい。感情のままに力を使うと向こうでも――)
そんな声は光にかき消えた。そして光が収まると、息を切らしてる野乃野足軽がいた。
「はあはあはあ……」
(まだまだ未熟で良かったですね)
そしてその水で出来た女性も普通に居た。どうやらさっきの光では倒せなかったらしい。そもそもそういう存在なのかも分からないが……
「お前は……一体……なんなんだ?」
息を切らしながら野乃野足軽はそう言うよ。ものすごい疲労感で、怒りに飲まれてた心が戻ってきたらしい。
(私がなにか……それは私自身も良くわかっていません。ただ私はずっとこの星を見守ってきました)
「それって……一体。お前はアクアではないのか?」
(アクアというのが私に貴方の事を教えてくれました。だからそのアクアというのと私は別と思います)
「教えてくれた……ということは、会ったのか?」
今の発言から野乃野足軽はそう思った。だって教えてくれた――その表現は会ったことがあるって表現ではないだろうか?
(いいえ、私も驚きました。私にいつの間にか私じゃない記憶があったのですから)
「どういう事?」
なにそれ? と野乃野足軽は思った。いつの間にか自分のじゃない記憶がある? それなんて中二病だ? 野乃野足軽は目の前の存在を訝しむ。
(俺を混乱させようとしてる? アクアは実はこいつに囚われてるとか? それで力を得た俺を殺しに来た存在がこいつって事? でもそれなら、既に目的は達してるはずだ。わざわざこんな場所まで来る必要なんてない……か?)
野乃野足軽は目の前の存在が何なのか、それを考える。けど結論が出るわけじゃない。
(貴方が言うそのアクアというのは僅かな水に貴方の力を与えた存在ということでよろしいですか?)
「そうだと思うけど……」
(それなら落ち着いて聴いてほしいですが、そのアクアという存在は私という存在に溶けたのかもしれません)
「溶けた? それって……」
(落ち着いてください。別に私が食べたとかそういうわけではないです。ただ私に貴方に関しての記憶があるということはそういう事だろうということです。私はこの星と共にずっとあるので。ですが人を一人一人認識することはありませんでした。
その認識を溶け込んだ植え付けた存在。それがアクアなのでしょう)
「???」
何が何んだかわからない……という顔を野乃野足軽はしてた。それを観て表情がないその水の彼女も考える。
「つまりは私のほうが存在として上位なので私が残り、貴方が生み出したアクアは星に溶けたのだと思います。その時にアクアが溶けたことによって、その記憶が私へと流れたのでしょう)
「それで興味が湧いて俺の所にきた……いや殺しに来たってことか? この星は、俺の様な力をもった存在を許さないと……」
(別にそんな事を思ってません)
「じゃあなんで俺を殺したんだ!!」
(まだ死んでません)
「え?」
(貴方はまだ死んでは居ません。ようやく伝えられました)
そう言ってなにやら頭を押さえるような動作をする水で出来た女性。それを聴いて野乃野足軽はぽかんとしてる。