「勇者殿! ありがとうございます!!」
そういうのはこのサーザインシャインインラで唯一まともな部隊をまとめてる隊長だ。『メリアス・アルドパルト』がこっちに手を振ってる。かなりボロボロになってるが、彼は見た目ほどに疲れては居ないのか、まだ元気なようだ。
けど……
(流石に周囲は彼ほどに丈夫じゃないか……)
多分だが、彼はとても特殊なんだろう。それこそ二十代という若さで部隊長までなってるくらいにとても才能がある。周囲がついていけなくて当然かもしれない。実際の所、ちょっとしかまだ話してなんか無いはずだが、彼は特殊……いや特別なのだとわかる。
自分の様な魔法を使えるものから見たら、彼はとても大きな力を宿してる……とわかる。まあ彼は魔法なんて物を使えるわけではない。それに彼が特別な感じの存在だと言っても、自分や魔王が色々と教えたジャルバジャルやアズバインバカラの兵士達に及ぶかどうか……彼はまだ血浄しかパワーアップ手段をしらないだろうからね。
事実今もずっと血浄を使ってる。その馴染み具合というか、それで引き出せるパワーが他とは段違いな感じはあるが……それでも血浄ってのは教会がいやいや与えた魔法の様な物。ある意味魔法の一旦である。
教会は用心深い。血浄には色々と制限があることが自分たちの調査で判明してる。それこそ一定以上のブーストがかかることがないようになってる。それはきっと血浄を使いこなすやつが自分たちよりも強くならないようにするストッパー的な機能なんだろう。だからこそ、血浄でのパワーアップには限界がある。
(どういうことなんだろうか?)
血浄でのパワーアップには限界がある。あるはずだが、彼『メリアス・アルドパルト』さんはそれを突破してる気がしてならない
「メリアスさん、大丈夫ですか? その……無理とかしてないですか?」
テンション的には彼はとても元気に見える。けどもしかしたらとても疲れてるかもしれない。てか血浄は効率が良い力でもないし……メリアスさんほどに力を引き出してるとしたら、それだけ消耗も激しくなってておかしくない。
「無理なんていつもしてます。けど……市民が安心してくらせるようにするためなら、いくらでも無理しますよ」
そういうことではなかったが……彼の目はとてもキラキラしてる。勇者の自分からみても、彼は眩しい……と思えるほどにまっすぐだ。これだけ真っ直ぐなら、ある意味でこのサーザインシャインインラの上層部とかからは嫌われてるんじゃないだろうか? なにせ不正とか、悪どいこととかめっちゃ嫌いそうだし。
ある意味で彼がこうやってここに存在してるのはなかなかに奇跡かもしれない。もしかしたら彼を邪魔だとおもう奴等は何回も彼を消そうとしてたのかもしれないが、それを乗り越えてここにいるとか……そして別にメリアスさんはそれに気づいてないとかありそう。
「血浄は長くは持たないはずですけど」
「我々は血浄を重ねがけしてますから」
「あっ、そうなんですね」
なるほど……とか思ったけど、そんな事できるの? しかもそんな事したら更に消耗は早くなるような……それでもメリアスさんはともかく、その部下たちもまだ動けてるんだから凄い。とりあえず自分は彼等に回復魔法をかけることにした。